花笑み Ⅲ (ページ21)

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nb『ん、あぁ…』

それまで軽く相槌を打っていた翔太が、
途端に情けない声になって、言い淀む。

しばらく、えー、とか、あー、とか言っていたが、
一度ため息を着くと、
恥ずかしそうに声のボリュームを絞りながら話し始めた。

nb『笑うなよ…？
　その…見えたんだよね、
　みんなが踊ってるところがさ』

翔太も一緒だったのか。

そう思うと、心がすっと楽になった。
正解を教えてもらったような、
突き抜けた爽快感みたいなものが駆け抜けていく。

nb『それに、
　一曲目だったら、俺たち余裕だろ？
　そんなのつまんないじゃん』

「なんか、安心した。」

nb『ならよかったけど』

「俺も見えた気がしたんだよ。」

翔太はしばらく黙っていたが、
急に「はあああ」と大きく息を吐いた。

nb『まじでぇ…？
　よかったぁ、俺が変なわけじゃないよな』

安心したようにそう言うと、
電話の向こうで情けなく笑う声が聞こえた。

nb『まじ焦ったの。
　俺、とうとうおかしくなったかもって。
　良かったぁ』

翔太も俺と同じ感情を抱いていたみたいだ。

nb『…阿部も言ってたけどさ、
　これがちゃんと形になったら、
　もっと上に行けるような気がするんだよ。

　 9人で。』

最後の一言がやけに重く感じた。

「ありがとう。なんか自信ついた。」

nb『ならよかった』

でも、あえてそれには触れない。

やがてずるずると豪快に何かを啜る音が聞こえてきた。
ラーメンをすすり始めたらしい。

nb『うまっ！』

「こんな時間にラーメンかよ」

nb『うるせぇ』

そう言いながら、
俺も3つ目のチョコレートを口の中に放り込む。

それから、夜中にも関わらず、
時間を忘れて、関係のない他愛の無い話をした。

こうして翔太と二人きりで話すのも、
随分久しぶりだったような気がする。

　