花笑み Ⅲ (ページ17)

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いざこざがあったのは、
自分の稚拙さだったと思う。

後悔は重りとなり、
常に俺の心には後ろめたさがあって、

阿部は許してくれたけど、
自分が一番、自分のことを許せなかったから、
それ以上近づくのをいつも躊躇ってしまう。

おそらく無意識に、そうしていた。

「そうじゃない」

それが、彼に影を落としていたのなら、
取り除く必要がある。

阿部のせいじゃなくて、俺の問題だ。

「その、」

言葉を頭の中で一生懸命考える。
どうしたら伝わるだろうか。

彼を傷つけることなく、本当の気持ちを。

「俺にその権利はないっていうか」

ab「権利？何の？」

「寄り添ったり、踏み込んだり。
　俺である必要がどこにもない」

追いつかない物理的な時間は確かにあって、
かわした言葉の数も、明らかに少ない。

他のメンバーの方が分かってやれる。

ab「俺が病気になった時、
　どう思った？」

阿部は寂しそうに笑うと、
視線を少しだけ下に落としてそういった。

「…悔しかったし、苦しかったよ。
　あの時間を取り戻したかった。」

おそらく、誰よりも後悔した。
過去の自分を殴りたかった。

ab「取り戻す必要なんてないよ。
　あれは俺のわがままだし、
　
　あれがあったから、
　俺たちの今の関係があるんだと思うけどなぁ」

俺だって、全てが不正解だったとは思っていないけど、
やっぱり距離が空いていたあの時間、
一緒に重ねることが出来なかった時間は少なからずある。

ab「それに、あの時だって
　ずっと一緒にいてくれたじゃん。

　お互い話さなくても、
　わかりあえなくても、

　一緒にいてくれたじゃん。」

同じ時間を重ねてこれなかったわけじゃない。

形はいびつでも、不器用でも、
居心地の悪さをお互いに感じながらも、

一度だって、お互いを弾き出そうとはしなかった。

それは、他のメンバーに引き止められたからでも、
諭されたからでもなく、

ただ単純に、俺自身が、
彼の存在はここに必要だと思っていたからだ。