ゴールド・ハニー (ページ33)

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Aが編んでくれたマフラーを外すほどに、
外の気温は寒いのに、走り続けたせいで体が温まっていた。

落ち着け、何度もシミュレーションしたんだ。
今のところ、順調だってお義母さんが電話で言ってくれてたし。

JK「ごめんね、遅くなって、」

頑張れじゃなくて、頑張ってるよ。
テレビで見た状況なんてどこにもない。

ただ、Aを励ますことと、安心させてあげることくらいしか出番がない。

帝王切開といえども、それでも不安でたまらない。

JK「っ、」

頑張って、という言葉よりも。ただ、祈った。
お願いだから、どうか無事で。

見送る俺に言えるのは、これくらいだ。

JK「…絶対大丈夫だから、」

きっと、大丈夫…だ。
信じられなくても信じるしか出来ないんだから。

予定より少し早かった2月のとある日。
息を吐けば白く消えていく寒さの中

Aがくれたマフラーをお守りみたいに握りしめて
ふと緊張が切れたその瞬間を俺はこの先忘れない。

…産まれた。
ずっと、聞きたかったその声が。

俺の耳に響いてきてくれたから。

JK「…よ、かったっ……。」

「よかったわね、ジョングクくん。おめでとう。」

JK「あ、りがとうございますっ、」

涙がぽろぽろとこぼれて、床に溶けていったこの日を
俺はきっと一生忘れないでしょう。