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「あ、そういやしげ来てないなあ」
『“しげ”？』
時計をちらっと見て望くんが呟く。
「あ、他のスタッフのこと。俺と同じ時間なんやけど、まだみたいやねん」
『ふ〜ん』
どうやらその“しげ”という人がくる時間みたいなんだけど、勤務開始まであと10分らしい。
いつもなら来てるのに、と。
「まあ、いつか来るやろ。Aちゃん、休憩終わりやろ？一緒いこうや」
望くんはエプロンをつけてドアに手をかける
と同時にバンッと扉が開いた。
「おわ！なんやねん！って、しげ！危なっ！」
「おい！今、何時！？」
望くんが入ってきた人を避けると、その人はさっき話題にあがっていた“しげ”っていう人みたいで。
今まで中間さんも藤井さんも望くんも茶髪で、桐山さんも黒髪に少し茶が混ざった髪色だったけど、“しげ”さんはとっても綺麗な黒髪が印象的だった。
はあ、はあ、と息切れしながら望くんに詰め寄っている。
「もうすぐ5時やけど」
「はぁー！間に合った！」
「どうしたん？」
「いやな、自転車パンクしてん。しかも乗ってる途中やで！？やばーってなって、ガーッて押してきた」
不運だったはずなのにニコニコしながらロッカーを開けた“しげ”さん。
そのロッカーは、中間さんが「汚い」と称していた漫画が詰まっていたところだった。
ぼけっと二人のやりとりを見ていたら、“しげ”さんが私の存在に気づいた。
「え……誰？」
「あ〜この人今日から入った
『あ、吉川Aです。よろしくお願いします』
「あぁ。えっと、重岡です」
私が目に入った途端、さっきの笑顔がスッと消えて、ペコっと会釈された。……ちょっと悲しい。
少し微妙になった雰囲気を察したのか、望くんが
「しげとAちゃん同い年やねんで。話合うんちゃう？」
『へぇ。そうなんだ』
同い年かぁ…と思って重岡さんを見ても、目をふいっと逸らされた。
「……さ！仕事仕事！淳太にどやされるで」
ああ、ごめんね望くん。雰囲気回復できなくて。
重岡さんはすーっとスタッフルームから出て行ってしまった。
あ！私も休憩終わりだった……
早く戻らなきゃ。
それにしても、私何かいけないところあったんだろうか。
態度は悪くなかったと思うんだけど。
………顔？
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作者名：はなこ | 作成日時：2019年5月13日 22時
