図書室にて ページ8
『せ〜んぱい』
「…………」
『こんな所で会うなんて偶然ですね』
「…………」
『もしかしたら運命「うるさい」一応小声にって努力はしたんですけど』
場所が図書室ということもあってかなり小さい声で話している。
たまたま用があって入った図書室に淳太先輩がいるなんて。
感動している私を余所に、先輩はカリカリと何かをノートに書いている手を止めない。
『何してるんですか?』
横から覗きこむと、書いている反対の手をひらひらと振られる。
ああ、手まで綺麗。
「あっち行けってことやねんけど」
『あ、なるほど』
でもせっかく先輩の側にいられるのになぁ。でもあっち行けって言われたし。
ちょっとだけ……ちょっとだけ欲をだして、先輩が座っている五つ隣の席に座る。
『……………』
「……………」
『……………』
「………お前って」
ぼそっと何か聞こえる。
『へ?』
「なんかちょいちょい言ってくるわりに聞き分けええな」
『はい?』
そう言うと先輩は指で机をトントンと軽く叩く。
何のこと?
「無理にでも隣とかに座ってくるもんだと思ったわ」
あぁ、そういうことか。
『いや、真剣なところを私なんかが隣に行って邪魔しても申し訳ないですし』
「ふぅん」
『隣に座りたいのもあるけど……あ!でも緊張しちゃう』
「ちょっと感心して損したわ」
先輩はハァとため息をついて呆れたように笑う。
『素敵スマイルプライスレス』
「あほ」
すぐ真顔になるとこも素敵。
「山田は何してたん?」
『へや!?』
「変な声やめろ」
席五つ挟んでいてもちゃんと会話をしてくれる日がくるなんてびっくり。
ましてや私のことに興味を向けてくれるなんて思ってもなかったから、返し方が分からない!
『え、と……じゅ、授業で調べものがあって、その』
「へぇ、真面目に授業受けとんのや」
『私をなんだと思ってるんですか』
「普段が普段やから」
『自覚はあります』
「あるんかい!」
あはは、とさっきの呆れ笑いなんか比にならないくらい楽しそうに笑う先輩。
『……綺麗』
「はあ?」
『……え?あ!いや、そのこれは』
いつもみたいにきゃあきゃあ言うわけでもなく、真顔でいっちゃったけど、それよりも、先輩が手の甲で口元を隠して顔を背ける反応に驚いた。
「ちょ、お前…ほんまなんやねん」
いつも「はあ?」とか「うるさい」としか返してくれないから。
お互いどきまぎして、その後は調べものどころではなかった。
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作者名:はなこ | 作成日時:2019年5月14日 20時