永遠に幸あれ【梅原裕一郎】

意外と可愛い君のこと ページ3

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『あのさ、裕一郎のこと好きかもしれない』

デビューして、名前がある役を初めてやることになった時にAから言われた。
同じ時期にAにも同じようなことがあって、お祝いしようかと俺の家に来た時のこと。

養成所時代に一人暮らしを始めようと思い立ったものの、金が無いしそんな人間に住めるような場所が見つからなくて、という相談をしたら『じゃあうち来れば？』とAから言ってくれた。

最初は、女の一人暮らしの家に転がり込むなんて…と思ったけど背に腹はかえられない。1日悩んで返事をした。
決して長い期間では無かったけど、お互いを支え合っていたと思う。

自分達なりに努力してやっと掴めたデビュー、そして役。悩む事もたくさんあって、相談していくうちにAのことがいつの間にか好きになっていた、尊敬出来る存在になっていた。

でも、不思議とAに対して一緒に寝ることにドキドキするとは思わなくて安心できる空間だった。

「俺も好きだよ、なんだよ好きかもって」
『なんか、いいのかなって思って』
「好きにいいも悪いもないでしょ」
『一応人の前に出る仕事だし』
「そういうのを表に出さなかったらいいじゃん」
『そうなのかな』

この業界は恋愛に対してとてもシビア。気にする理由も分かる。気にしないわけが無い。
それでもお互いが一緒にいて安心できる関係なら、ただの同期より心地良いものを望む。

こうしてAとの交際、同棲が始まった。

Aはわりと冷めたタイプだと思っていたけど、付き合い始めたら意外とそういう感じじゃないことに気付いた。

「行ってきます」
『待って待って、玄関まで』
「いいよここで」
『なんで！お見送りしたいんだけど！』
「はいはい」

行ってらっしゃいは玄関まで来てくれて、寝癖を直してくれる。

意外と可愛いところあるんだな、と思っていつもより頑張れた気がする。
早く『おかえり』が聞きたい。そんな毎日。

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