私が雨を好きな理由【Tatsuya.F】 (ページ23)

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『実は私も謝りたかったんです。連れがちょっと失礼な態度を取ってしまって』

結局あの後由樹はいつも通りだったけど、やっぱりあの時は何か変だった。

理由はよく分からないけど阿部さんには嫌な思いさせてしまっただろう。

深澤「全然気にしないでください！いきなり話しかけたからお連れさん驚かせちゃったと思うんで。…もしかして彼氏さんとかでした？」

『へ？』

深澤「あ、いや。阿部ちゃんが…あ、阿部ちゃんって呼んでるんですけど」

何故か呼び方を説明する彼に少し笑いそうになったけどそのまま話を聞く。

深澤「すごいイケメンさんだったって言ってたんで」

頼んだコーヒーのストローを吸いながらこちらを見る深澤さん。

…由樹、彼氏に見えたのか。
確かに当たり前だけど顔は全然似てないもんな。

『彼氏じゃないです。弟なんです』

深澤「え、弟？？」

『はい。笑
顔似てないのでたまに勘違いされるんですけどね』

少し無愛想だけど優しいし、見かけも良いから昔からモテてた由樹。

社会人になってからは落ち着いたけど、学生時代は勘違いされて色々大変な思いもした。

今となっては懐かしい思い出だ。

深澤「じゃあお姉さんに変な虫がつかない様にしてたのかもしれないですね」

『いやいや、そんな心配される様な事もそもそもないですから』

深澤「だって北条さんめちゃくちゃ綺麗だから。弟の立場だったら心配になるか…も…って何言ってんだ俺。すみません」

自分の言った言葉に赤くなった頬を指で触っている深澤さん。

急にそんなこと言うから。

言われ慣れない言葉に、ドキンと心臓が鳴って体が熱くなる。

頬が赤いままの深澤さんと目が合う。

多分私も顔が赤い。

顔を見られるのは恥ずかしいのに、何故か視線を逸らせなかった。

深澤「…そ、そろそろ出ます？」

『…はい』

めちゃくちゃ変なタイミングでのお会計。

気まずかったけど、このままよりはいいだろう。
そのまま買った荷物もまとめて持ち二人外に出た。