21. ページ21
本格的な冬が到来した。
喫茶店のメニューも自然と暖かくてホッとするものを中心に揃えていく季節。
毎年この時期にはグラタンとか煮込みハンバーグなんかが人気。手間はかかるけど美味しそうに食べてくださる姿を見ると頑張ろうと思える。
ただ、材料の買い出しが大変な時期でもある。
普段は近所のお店で買い出しをしているけど、新しい調味料を揃えるため街に出る。
ついでにいろんな喫茶店を回ってメニューの参考にしてみたり。
雑誌やネットでも調べられるけど現場を見て回った方が得るものが多いかな、なんて思いで。
しっかり防寒対策をして駅を降りて向かった先は沢山の調味料や香辛料などが売っているお店。
定期的に来るから覚えてもらってて、こんなの入りましたよ、と店員さんから色々アドバイスを頂く。
料理だけじゃなくてデザートにも使えそうなものも沢山あるみたいだ。
ケーキのメニューなんかもそろそろ変えたいと思ってたから使えそうなものを見ていく。
こうやって想像しながら店内を回る時間は仕事でもあるけど癒しの時間だ。
店員「いつもありがとうございます」
思ったより買い込んじゃったな。重さのある紙袋を受け取って店を後にする。
腕時計を見るとお昼を回っていた。
お腹も空いたしご飯にしようかな。
先に調べておいた喫茶店へと足を運ぶ。
やってきたのは少しだけ通りに入ったところの個人経営の喫茶店。
お昼のピーク時間を過ぎていたからか、店内は比較的空いていて隅っこの席を無事に確保した。
内装も落ち着いてて、ハーブの香りが心地よい。
観葉植物置いてみるのもいいかもなあ。
でも手入れ大変かな。
つい中を見てしまう癖はいかんせん職業病だろう。怪しくない程度に色々見ながら参考になりそうなものを記憶しておく。
しばらくしてやってきたオムライス。美味しい。
食後のコーヒーも口にしてほっとひと息つく。
営業する側としても、お客側としても、やっぱりこの空間が落ち着くし好きだ。
さて、この後どうしようかな。
目当てのものは手に入ったし適当に色々見てから帰るかとスマホを取り出して調べようとしたその時。
「北条さん？」
上から聞こえてきた声。
スマホから視線を上げると
深澤「お久しぶりです。えっと…俺のこと覚えてますか？」
『…深澤、さん？』
黒マスクに丸メガネにハットとこれまた完全防備で最初は分からなかったけど、声を聞いて思い出した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1037人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：mamemiya
| 作成日時：2023年1月29日 1時
