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ゆっくりこちらに近づいてくる由樹。
阿部「あ…ごめんなさい。お連れの方ですか？」
『あ、はい。えっと…』
私たちの前まで来ると彼を見てペコっとお辞儀をしている。
由樹「こんにちは」
阿部「こんにちは」
背の高い二人がぎこちなくお辞儀し合って何だか変な光景だ。
由樹「…」
するとマスクをしている彼の顔を何故かじっと見つめる由樹。
『由樹？』
由樹「…あぁ、何でもない。じゃあ俺たちこれで」
もう一度ペコっとお辞儀して私の肩を抱いて来た道を戻ろうとする由樹。
急いで振り返るとヒラヒラと手を振っていた彼。
私もペコっとお辞儀してその場を後にした。
店を出ても無言のまま。
その横顔は怒っているようにも見える。
ぶっきらぼうだけど人当たりが悪いタイプでは無いのに。
『…由樹？どうしたのよ』
あんな風に人に接する姿初めて見た。
ゆっくりこちらに顔を向ける由樹。
由樹「さっきの男知り合い？」
『知り合い…ではないかな』
由樹「じゃあどういう関係？」
『…？お客さんだよ。この前お店までコーヒー取りに来てくれたの。名前も知らないからどんな人か全然分からないけど』
そう答えると何か考えるような表情をする。
どうしたんだろう。いつもの由樹じゃない。
由樹「…Aってテレビ見なくなったんだっけ？」
急にまた違う質問をする由樹に多分怪訝な顔になってると思う。
『全然見てないの知ってるでしょ。ねぇ何か怒ってる？』
由樹「何でもねえよ。帰るぞ」
急に早足で進み出す由樹。
その表情はいつもの由樹に戻ってるみたいだった。
由樹「ほら、置いてくぞ」
『…はいはい』
よく分からなかったけど。
突っ込むことでも無いかと思い私も早足で由樹の背中を追いかけた。
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作者名：mamemiya
| 作成日時：2023年1月29日 1時
