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このお店は個室もあるらしい。
二人だし、どの席でも良いかと奥のテーブル席に向かい合わせで座った。
『…なんかお肉見たことない値段なんだけど大丈夫なの？』
由樹「気にすんなよ。こう見えて俺結構稼いでんだから」
大学卒業後、大手に就職した由樹は私と違って社交的で人付き合いも多いタイプだ。
大学の時と比べたら髪も黒くなって落ち着いたけどどこかヤンチャ感は抜けていない。
『んじゃ遠慮なく』
片っ端から美味しそうなお肉をどんどん頼むと、少しは遠慮しろよと楽しそうに笑う。
由樹とご飯を食べるときはお酒も進む。
私も由樹もそこそこザルなので、明日が定休日ってこともあるけど気づいたら瓶が何本か空いていた。
由樹「んで？そろそろ出来たわけ」
『何が？』
由樹「彼氏だよ彼氏。A今年29だろ？」
そういえばもうそんな歳だった。
自分の歳なんていつから気にしなくなったんだろう。
『んー、正直興味無いしそもそも出会いもないからね』
毎日お店で年配のおじさまとは沢山出逢ってるけど、面と向かって異性と最後に話したのはいつだったっけ。
”めっちゃ美味いです”
不意に浮かんだあの柔らかい笑顔。
由樹「ん？」
『いや、何でも無い』
そういえば最近唯一話したのは彼だったな。
あとコーヒーを受け取りに来たあの男性4人。
由樹「まぁ俺も結婚願望まだないけどさ。誰か紹介するか？」
『別にいいってば。私は喫茶店の仕事があればそれでいいの』
そう言ってグラスを口に運ぶと、見た目はそこそこなのになと余計な一言を添えて笑うからとりあえず睨んでおいた。
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作者名：mamemiya
| 作成日時：2023年1月29日 1時
