11. 深澤side ページ11
深澤side
朝から広い空間の中を移動しながらどんどん時間が過ぎていく。
「次サビから行くよー」
演出家と声を掛け合いながら立ち位置を確認していく。
ライブを控えてここ最近はずっとリハーサルの日々。
冠番組の収録や個々の仕事もこなしながら限られた時間でやっていくからリハーサルとはいえ緊張が走る。
向井「あかんー腹減ったぁ！」
佐久間「今日出前どーする？」
休憩時間。
楽屋に移動して次のリハ時間まで各々休む。
岩本「俺甘いもんも食いたいから、ちょっと近くのカフェ寄ってコーヒーもついでに買ってくるわ。他に欲しい人いる？」
甘いもの好きな照がスマホを触りながら立ち上がる。
今日はいつも置いてあるお菓子やコーヒーが無かったから外で買ってくるらしい。
俺も一緒に頼もうかな。
深澤「…あ」
急に思い出して財布の中から取り出した一枚の紙。
まだ一つも押されていないスタンプカード。
深澤「照！ちょっと待って」
1人楽屋を出ようとした照を呼び止める。
岩本「ん？どした」
深澤「俺コーヒーのいい店知ってるからちょっと電話するわ。とりあえずメンバーと休憩中のスタッフさんの分頼んでくる」
岩本「まじ？サンキュー」
中に戻った照と入れ違いで楽屋を出て廊下の壁にもたれかかる。
スマホを取り出して、スタンプカードの裏面に書かれてた番号をタップしていく。
時間はまだお昼前。
もしかして一番忙しい時間だったりするかな…。
5コールほど鳴った後、プツッと音が切り替わった。
『はい、喫茶菖蒲です』
電話越しに聞こえた声。
あの時と同じ、透き通った凛とした声だった。
深澤「えっと、こんにちは。
この前お邪魔した深澤です」
思ったより声が詰まっちゃって
自分でも緊張してるのが分かる。
何でこんな緊張してんだ、俺。
『こんにちは。お久しぶりです』
名乗ったはいいけど覚えてなかったらどうしようと思ったけど、覚えてくれてたみたいだ。
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作者名：mamemiya
| 作成日時：2023年1月29日 1時
