冷たい手-1-【紫】 (ページ35)

今日:2 hit、昨日:35 hit、合計:44,985 hit

35) ページ35

実花を抱きかかえて寝室に運ぶ濱田さんが頭に焼き付いてはがれない・・・

濱田さんの優しい笑顔が実花に向けられているのを見た瞬間、
何とも言えない感情になって慌てて外へ飛び出した。

『濱田さんは、実花のこと・・・』

それ以上先は認めたくなくて、言わなかった＿＿＿

「＿＿＿ちょっ、待って！」

振り向くとそこには、ハァハァと肩で息をする＿＿＿

『・・・望くん。』

望「・・・ほら。夜は結構冷えるから。」

砂浜を波打ち際に沿って歩く私に
望くんの物であろうカーディガンを肩にかけてくれた。

『あ、ありがとう。

・・ほんと、沖縄の夜って結構寒いんだね。笑
あ、私たちのヴィラがもうあんな遠くに！笑
わぁ、いつの間にかこんな遠くまで歩いちゃった！笑』

望「・・・別に無理して笑わんでもええやん。」

『え・・・？』

望「・・さっきの濱ちゃんのこと。・・気にしてるんやろ？」

『え・・・い、いや。別に・・何も。』

望「俺には、・・話せへん？」

『え・・・？』

望「スマホ、貸して。」

言われるがまま望くんにスマホを渡す。

望「＿＿これ。俺の連絡先。」

はい。と返されたスマホの画面には虹の写真のアイコンと“望”の文字＿＿

濱田さんも虹の写真だったなぁ・・

なんて・・
また濱田さんのことを考えてる自分がなんだかおかしくて
そして、こんな時でも思い浮かべるのは濱田さんのことで・・・

濱田さんのこと私、好きなんだ。と今更確信する＿＿＿

望「泣くなや。」

フワッと香る柔軟剤の匂いと海の匂いに包まれる。