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杖を取り返すならチャンスは今。ハーマイオニーの方に向けて呪文を唱えた。
『エクスペリアームス！』
私は杖がなくても魔法を使うことが出来る。杖があった方が呪文の威力は強くなるのだけど＿。
呪文は見事成功。ハーマイオニーの手から杖が離れ、私の手の中に収まる。
｢A、どうして……｣
ハーマイオニーは今にも泣きそうな顔だった。
『ごめん、ごめんね…』
私は泣きそうになっているハーマイオニーを、見ているだけではいられなかった。ハーマイオニーに抱きつこうと手を伸ばした。
｢ハーマイオニーに近づくな！裏切り者！｣
ロンの言葉によって私は動きを止めた。目から涙がポロポロと流れた。止めようにも止められない。大切な友人に拒絶された衝撃は大きかった。
｢エクスペリアームス！｣
リーマスの声だ。リーマスはハリーから杖を取り上げ、シリウスと話をしていた。
｢A、君は勇敢だ。自分の行動に自信を持って。｣
涙で濡れた顔を服の袖でゴシゴシと拭った。
『ありがとう、リーマス。』
荒れていた心が少し落ち着きを取り戻した。
｢ルーピン先生！一体何が＿｣
ハリーが大声で割って入った。
｢ハリー、先生は＿先生は＿｣
｢ハーマイオニー＿｣
｢その人とグルなんだわ！｣
｢ハーマイオニー、落ち着きなさい＿｣
｢私、誰にも言わなかったのに！先生のために、Aのために隠していたのに ハリー、騙されないで。この人とAはブラックが城に入る手引きをしてたのよ。この人もあなたの死を願ってるんだわ。＿Aはルーピン先生の娘なの。そして、その人は狼人間なのよ！｣
別にリーマスは家族だということを秘密にしているつもりはなかった。ただ言う必要は無いと思ったから言っていなかっただけ＿。
リーマスの顔は蒼ざめていた。しかし、落ち着いている。今まで何度も職場で狼人間だと知られては罵られ、避けられてきたからだろうか。私はそんな世界が憎かったが、それよりも何も出来ない自分が憎かった。
｢いつもの君らしくないね、ハーマイオニー。残念ながら、四問中二問しか合っていない。私とAはシリウスが城に入る手引きはしていないし、もちろんハリーの死を願ってなどいない…Aは私の大事な家族だ。…私が狼人間である事は否定しない。｣
雄々しく立とうとしたロンが、足の痛みに小さく悲鳴をあげて座り込んだ。リーマスは心配して、近づこうとした。
｢僕に近寄るな、狼男め！｣
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作者名：作者 | 作成日時：2022年3月14日 21時
