Ep.33 ページ33
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波の音と潮の匂い。
照りつける太陽は反射する海を輝かせる。
「ひっさしぶりの海!それにしても人多いわねー」
そう満更もない嬉しそうな呟き。
晴れた海が心を騒ぎ立てるのか、笑顔で相槌を打つ私も相当浮かれてるみたい。
いや、
「あたしはこれからイケメン狩りだから!あんたらも協力してよね!?」
「もう、太陽よりぎらついてどうすんのよ」
昔となんら変わりない友達のやりとりがきっと頬を緩ませてるんだ。
「それにしてもあんたって子は...」
「色気もくそもないわね...」
友達の視線は私を下から上へと。
ビキニ姿の2人とは相容れないTシャツ短パンに、いっぱいの貝殻が入ったバケツを抱える私に苦笑を落とす。
「だ、だってこっちの方が動きやすいし...!工作の時間とかで使えるかなーって...」
「職業病だわ」なんてあまりにも哀れな目を向けるから、なんだか言い訳じみた言葉が並んでしまう。
「それよりご飯!あっちで焼きそばとか売ってるみたいだよ!」
なんとかして話題を自分から逸らしたくて、咄嗟の提案で向かうわ海の家。
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踏みしめる砂浜にサンダルは沈み、熱を蓄えたそれは少し暑い。時折飛んでくるビーチボールがスイカだったりして、海の家まであまり変わり映えのしない海岸でも退屈はしない。
「でさー、上司がなんて言ったと思う?」
夢中で話に花を咲かせていると、1人の足は突然止まる。
「なにあれ」と添える声の先は不自然な人だかり。
人というものは好奇心に素直なもので、打ち合わせなしに揃って小走りに向かう。次第に見える群衆の謎は、なにかの撮影陣が海水浴の客に囲まれているものだった。
「なにかの撮影っぽいね」
「えっだれだれ!?芸能人!?」
食いつく2人に引っ張られ、人混みをかき分ける。
思いがけないサプライズを受けたように高鳴る心...
...だったのに。
その人物が目に入れば一気に血の気は引いていった。
「バッチリですね先生!一旦休憩に入りましょうか!」
撮影機材とスタッフに囲まれたその銀髪パーマは相も変わらず気だるそう。
振り返ると共に湧く黄色い声援とは裏腹に、その死んだ魚のような目とばっちり合ってしまった。
「これは一体...」
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S(プロフ) - めちゃんこ好きです!更新待ってます! (8月11日 14時) (レス) @page37 id: cc16e6db3c (このIDを非表示/違反報告)
春風 - 更新ありがとうございます!とっても嬉しいです!これからも楽しみにしています! (2022年11月30日 15時) (レス) id: 1ece860df7 (このIDを非表示/違反報告)
ツバサ(プロフ) - 更新待ってました…!すごい嬉しいです!銀さん作家だったんだと驚きでいっぱいです!あと文章の書き方がとてつもなく好きです、ありがとうございます! (2022年11月28日 8時) (レス) id: 1052176700 (このIDを非表示/違反報告)
むぎ - このお話大好きです…!更新待ってます! (2022年4月4日 18時) (レス) @page31 id: fc9ca49c49 (このIDを非表示/違反報告)
粥 - 何回見ても、ストーリー面白いし好きです!更新されること願ってます!!!! (2022年1月6日 23時) (レス) @page31 id: b23a2b20e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:□白澤□ | 作成日時:2020年12月1日 12時