五話 クラリス様とエヴァンくん ページ5
クラリス様の部屋にやってきた私たちは、ソファーに並んで腰かけた。座った瞬間、身体が吸い込まれていくような感覚がして驚く。なんだこれは。こんなソファー、座ったことがない。実家のものとは大違いだ。
「さあさあ、早く話して、ソフィア。恋バナよ!」
「えっ、あっ、はい!」
ソファーに夢中になっていた思考が引き戻される。なんのためにここに来たのかすっかり忘れていた。
クラリス様は期待のこもった瞳でこちらを見つめてくるが、なんとも言い出しづらい。一人の時だって、口に出すことすら恥ずかしいのだ。公衆の面前で婚約を申し出たルイス様には尊敬の念しかない。
なかなか言い出せずにもごもごしていると、耐えられなくなったのかクラリス様が口を開いた。
「さっきも言ったけど、やっぱりエヴァン?優しくて、気配りできて、剣も強いし。まあちょっと押しに弱いところもあるけど。わたしだって、ルイス様からの申し出とか、お父様からの命令とかがなければエヴァンと結婚しようと思ってたし」
「えっ!?それ、本当ですか?!」
どう切り出すか、心の準備をしていたのを投げて、思わず声を上げてしまった。驚いたようにクラリス様が返す。
「え、ええ。だって、他に同年代の知り合いなんていないし、いちばん信頼してるのはエヴァンだし……結婚相手を考えるようになってからそう思ったのよ。だから、ルイス様の登場が予想外で。まさかこうなるとは思わなかったわ」
「そう、そうなんですか……」
過ぎてしまったことをあれこれ言ってもしょうがないけれど……どうしても、あの夏のことをいろいろと考えてしまう。きっと、ほんの小さなすれ違いだったのだ。神様の悪戯だったのかもしれない。
大声を出したかと思ったら急に黙り込んだ私を不思議に思って、クラリス様は再び声をかけてきた。
「エヴァンじゃないの?」
「エヴァンくんではないです。彼は友人です」
「そう……じゃあお兄様?モテモテだもの」
「違います」
「うーん、騎士のワイアットとか、ライリーとか?歳が近いものね」
「違います」
「え〜?じゃあ、使用人のブルーノとかダリウス、ジャスパーとか?」
「違います」
「ま、まさか、アルじゃないわよね!?やめといた方がいいわよ!」
「違います!」
その後も何人か名前を挙げていたが、不思議なことに、一向に彼の名前は出てこなかった。
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お芋(プロフ) - しぇるふぃあ。((芦原晴))さん» わー!!再びコメントありがとうございます……!!そうなんです。彼は不器用なんで……ほんと!!(言葉にならない)そして、そうです!私自身彼らが大好きなのでもう少しだけ、騒がしい彼らの様子を書けたらな〜と思っております!お楽しみに! (2020年2月27日 23時) (レス) id: 105c0e2da2 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。((芦原晴))(プロフ) - 本編は…ということは番外編や後日談が更新されるという解釈で合っていますか?楽しみすぎます…!! (2020年2月27日 23時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。((芦原晴))(プロフ) - タイトル回収されてドキドキしました…ソフィアちゃんの告白が成功して思わず「やったー!」と喜んでしまいました( ´∀`)やっぱり両片想いだったんですね!一緒に働き続けたいがためにちょっと面倒くさくなってしまうグレンさんかわいくて大好きです!(続きます (2020年2月27日 23時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
お芋(プロフ) - わさん» コメント、感想ありがとうございます!本編は完結しましたが、もう少しだけ続くので楽しんでいただけると幸いです(*^^*) (2020年2月27日 22時) (レス) id: 105c0e2da2 (このIDを非表示/違反報告)
わ - 早く続きがみたいです!!すごく楽しみにしています! (2020年2月27日 3時) (レス) id: 6d2dda4d98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お芋 | 作成日時:2020年1月14日 21時