番外編四 ページ28
いつものティータイムの後、新しい本を借りるため、クラリス様のお部屋に伺うと、神妙な面持ちで彼女が話しかけてきた。
「……ねえ、ソフィア。あなただから話せることなんだけど……」
「なんですか？」
いつもと違った様子に不思議に思いながらも尋ねると、クラリス様はおずおずとノートを差し出してきた。
「ちょ、ちょっとこれを読んで欲しくて……あっ、でも目の前で読まれると恥ずかしい……いや、感想とか聞いてみたいし……」
後半はよく聞き取れなかったが、とりあえずノートを受け取り、読んでみることにした。どうやら中身は何かの文章らしい。
読み終わり、ノートを閉じる。
「……ど、どうだった？」
「これ、クラリス様が書いたんですか？」
「……うん」
「とっっっても、おもしろいです！！！」
中身は、例の『獣人のお気に入り』に登場する接点のない二人が出会う話だった。確かこの二人については、この前クラリス様が、
『わたし、この二人のことも好きなんだけど、実際会ってたら絶対気が合うと思うのよね〜』
と言っていたはずだ。
「ほんと！よかった！短いけど、小説なんて初めて書くから読まれてる時はドキドキしちゃった！」
「とても読みやすかったですし、比喩表現なんかも素晴らしです。これって、この前言ってた……」
「そう！本編の展開的に今後絶対会わないだろうな、って思ったらなんだかペンが進んじゃて」
そう言ってクラリス様は照れ笑いをした。普段から多くの本を読んでいらっしゃるから、これだけ素晴らしいものが書けたのだろう。
「実は、書きかけのものもまだあって……完成したら、また読んでくれない？」
「もちろん！ぜひ読ませてください！」
「あ、でもこのことは皆には……特にアルには秘密ね！」
私は返事をして、笑いあった。クラリス様と私の、二人だけの秘密である。
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作者名：お芋 | 作成日時：2019年10月16日 21時
