二十五話 握手 ページ25
「……にしても、伯爵家の騎士団員と王家の騎士団員がこんなにも接戦って……大丈夫か？」
「こら、アルバート。ルイス殿は十分お強い方だった。そういうことを言うもんじゃ……」
「いや、アルバート殿の言うとおりだ」
声のした方を向けば、ルイス様が立っていた。
「今回の手合わせで自分の力不足を実感した。なんとか勝てたが、ギリギリだった。もっと鍛錬が必要だな」
ルイス様は少し悔しそうに顔を歪めるが、真剣な顔に戻り、言った。
「エヴァン殿は実力もあるし、センスもある。今の年齢を考えればもっと良い騎士になれるだろう。そこで提案だ。王家の騎士団に入らないか？」
その言葉に周りの騎士さんたちが一斉にどよめく。次期騎士団長候補からの直々の勧誘だ。エヴァンくんはなんと答えるのだろう。
「お褒めの言葉、ありがとうございます。しかし、その件についてはお断りします」
エヴァンくんはまっすぐルイス様を見つめ、きっぱりと断った。
「自分は、この伯爵家に忠誠を誓った騎士です。国を護ることは重要ですし、いざとなったら命をかけて戦います。ですが、おれのいちばん護りたいものはここにある」
「自分が産まれ、成長したこの場所を。皆が生活し、帰ってくる場所を護りたい。それがおれの使命です」
そう宣言すると、ルイス様は頷いて言う。
「わかった。その素晴らしい志を持った君こそ、騎士の名にふさわしい。オレも見習おう。……またこちらに来る時があれば手合わせを願ってもいいだろうか」
「もちろんです。次は負けません。それと」
言葉を区切り、エヴァンくんはルイス様に近づく。
「……クラリスを、よろしくお願いします」
「……ああ」
二人は固い握手をした。
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作者名：お芋 | 作成日時：2019年10月16日 21時
