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二十二話 試合開始 ページ22

準備が整い、試合開始の合図がされた。両者ともに腰の剣を抜く。模擬刀ではあるが、見た目は剣のようである。ギュッ目を瞑り、一度剣を視界から消す。心臓の鼓動が早くなり、嫌な汗が出る。

(大丈夫、ゆっくり息をして、落ち着いて……)

みんな試合に集中しているし、使用人の私がクラリス様たちと同じように椅子に座るわけにもいかないため後ろの方にいるから、少し私の挙動がおかしくなっても大丈夫だろう。剣を見ずに、何も思い出さずに済めば大丈夫なはずだ。
突如、剣の交わる音が聞こえた。一気にまわりの歓声が大きくなる。それでも、剣の刃と刃の交わる音は嫌なくらい耳に入ってくる。

脳裏に浮かぶ赤、傍に横たわる肉の塊、怒号、嫌な匂い……。
忘れたくても忘れられないもの。消したくても消せないもの。その全てが頭の中を流れていく。

嫌でも耳に入ってくる音と、嫌でも脳裏に流れてくる記憶。呼吸が荒くなって、胸が痛い。立っているのも辛くなってきた。その場にしゃがみこんで震える手を抑える。上手く息が出来ない。自然と涙が出てきて視界がぼやけてきた。

(誰か、誰か、助けて……)

そう心の中で叫んでも助けは来ない、そう思ってた。

「大丈夫、ですか、ゆっくり、息をして、ください。落ち着いて」

大きな手が私の背中をさすってくれた。ずいぶんと息が荒いが、声で誰かはすぐにわかった。名前を呼ぼうとしても、上手く声が出ない。

「無理に喋らなくて大丈夫です。ここに居てはあなたが危険です。一旦外に出ましょう。エマがもうじき来て、仕事は変わってもらいますから大丈夫です。立てますか?」

私が動けないでいると、『失礼します』と言って私を横にして抱き上げた。これをされるのは二回目だが、今は羞恥など考えていられなかった。脳裏に浮かぶ記憶はまだ消えなくて、不安でいっぱいだった私はすがりつくように彼の首に手を回していた。彼は何も言わず、私たちは鍛錬場を後にした。

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設定キーワード:使用人 , メイド , 貴族   
作品ジャンル:ラブコメ, オリジナル作品
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作者名:お芋 | 作成日時:2019年10月16日 21時

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