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六話 あの日のこと ページ19

着いた場所は庭園内にあるベンチだった。座るように促される。掴まれていた腕を離されて、なんだか寂しいような気持ちになったのは気のせいだろうか。

「……グレンさん、歩くの、早い、ですよ」
「すみません。今後は気をつけます」

息を整えようと呼吸を落ち着かせているとグレンさんが私の頭に手をやる。

「髪の毛、ボサボサですよ。直しますからそちらを向いてください」
「す、すみません。でも、自分で直します」
「いいですから」

強引に身体の向きを変えられ、お団子にしていた髪を解かれる。邪魔かと思い、カチューシャも外した。

「……何か、あったんですか。自分には話したくないなら話さなくて結構ですが」
「え……」
「いくら自分でも泣いてる女性を見れば何かあったことくらい察しますよ」

思わず目に手をやると少し濡れていた。気付かぬうちに涙を流していたらしい。

「……私、刃物が怖いんです」

ぽつり、ぽつりと呟くように話し始めた。
十年前のあの日のことを。


△▼△▼△▼


その日は、なんてことない一日になるはずだった。
夕食の時間も過ぎ、店を閉める頃事件は起きた。

閉店間際を狙って賊が襲ってきたのだ。扉が蹴破られ、賊が侵入する。私たち家族は店の片付けや明日の仕込みをしており、客席のテーブルを拭いていた私がいちばんに狙われた。

「ソフィア!」

私のいちばん近くで作業していた父がかばうように私を身の後ろへ隠す。
突然のことにわけがわからない。父と誰かが大声で何かを言い合っているが理解できない。

そして、それは突然に起こった。

私をかばっていた父が倒れた。まわりには赤い液体が広がる。嫌な匂いがする。
倒れたまま起き上がらない父を恐る恐る見ると、胸にナイフが突き刺さっていた。

何が起きているのか、全くわからなかった。

呆然としていると、見知らぬ男がナイフを振り上げていた。その切っ先がまっすぐ私に向かってると認識しても、少しも動くことはできなかった。

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設定タグ:使用人 , メイド , 貴族   
作品ジャンル:ラブコメ, オリジナル作品
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お芋(プロフ) - シャル@如月唯奈さん» 読んでいただいて、ありがとうございます!お褒めに預かり光栄です!頑張ります。ありがとうございます!! (2019年9月18日 19時) (レス) id: 105c0e2da2 (このIDを非表示/違反報告)
シャル@如月唯奈(プロフ) - イベント参加ありがとうございます!早速読ませていただきました!凄く分かりやすくて良い小説ですね!何より主人公かわいい(*≧з≦)これからも更新頑張ってください〜 (2019年9月18日 19時) (レス) id: 0214723abe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:お芋 | 作成日時:2019年9月6日 17時

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