最後の一粒 ページ46
ASide
結婚をしてからも、かつきとの日々は変わらず楽しかった。
けれど、人生というのは嬉しいことばかりではなくて。
『…かつき、もう、寝なきゃだよ…。』
「…るせェ、俺に命令すンな。」
私の身体は、33歳で限界を迎えた。
原因は幼い頃から18歳になるまでの個性の過剰使用。
そもそも、ダイヤモンドという鉱物は、地球の深部で長い時間をかけて生成されるもの。
それを個性で同質の物を産み出していた私の命の灯火は、成人前には既に、本当に小さいものだったのかもしれない。
『…かつき怒るかもしれないけど、話してみてもいいかな。かな？』
「ぜってェキレるやつだわそれ、喋ンな。」
ぎゅっと下唇を噛みながら彼は私のもうほとんど感覚のない手を握りしめた。
互いの薬指にはダイヤモンドの輝きが控えめに、美しく煌めいていた。
このダイヤモンドは私の個性によるものであり、当然彼も最初は嫌がったけれど、
【この個性が、かつきと私を巡り会わせてくれたから。】
そう伝えれば、普段強気な彼も私の申し入れを受け入れるしかなかった。
この指輪は世界にひとつだけ、私の涙から生まれたもの。勿論嬉し涙。
『…私は、この身体だったから、かつきとの子供も産んであげられなかった。
それに、まだかつきも33歳な訳だし…。
私がいなくなって、落ち着いて、もし、もしも素敵な人と会えたなら
私のことは気にせず、新しい家庭を築いても良いんだよ。』
彼は私の言葉に僅かに顔を挙げ、
「…お前はよく分かりもしねぇモブ女と俺がイチャついて何も思わねェンか。
つか俺が死んでもそんな事しねェの分かってて言ってンだろ。
やめろ、どうしようもねェ位俺はお前しか見えてねェ。」
『…やだ、もっとだいすきになっちゃうよ…。』
「分かったならそれで良い。」
朦朧とする意識の中で、何度も愛しい彼の名を呼ぶ。
声に出ていないものもあったのに、呼び掛ける度に彼も少し掠れた、優しい声で私の名前を呼ぶ。
嗚呼、やっぱり。どうしようもないくらい貴方のことが好き、大好き、愛してる。
離れたくないのに、死にたくなんてないのに、
どんどん彼の声が遠くなって行く
それなのに何でかな、今私…。
「…ッ、A…、A…ッ…！返事、しろや…ッ……、A…ッ！！」
最期までかつきといられて、
世界で【一番】幸せ。
囚われ少女と爆殺少年 fin.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 367人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
引きこもり隊 - 上げて落とす！！もう、会社？の人たちひどすぎて途中真顔で見てた。最後に一言。 神作品をありがとう！！！！ (2022年8月17日 13時) (
レス) id: af8345609d (このIDを非表示/違反報告)
?みさと?(プロフ) - まじでね…泣きました…目からハイドロポンプという個性目覚めました()ありがとう (2021年11月5日 20時) (レス) @page47 id: e07bc81cad (このIDを非表示/違反報告)
Asahi(プロフ) - kokonaさん» kokona様 お、おティッシュでお拭きくだされ…こんなんばっか書いてるのでまた見かけたらぜひ読んでやってください。お読みいただきありがとうございました！ (2021年10月2日 23時) (レス) id: 97c6c5a223 (このIDを非表示/違反報告)
kokona(プロフ) - 一気に読んで大号泣です……。 (2021年10月2日 23時) (レス) @page47 id: b89a5e7749 (このIDを非表示/違反報告)
マウントレーニア(プロフ) - ららさん» らら様 面白いだなんてそんなありがとうございます〜😭 (2021年10月2日 10時) (レス) id: 719f235832 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Asahi | 作成日時：2021年9月22日 0時
