白昼夢の羊 (ページ6)

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「うわっ…凄い！」

何年ぶりに外を見ただろう。

車の中から外を見ると、真夜中なこともあって人はいない

だけどチカチカと光る信号も、風に揺れる木も、夜に紛れるコンビニも、見るもの全てに感動を覚えるほどだった

『窓は開けないでね』

「わかりました！…それよりお兄さんの名前、なんて言うんですか？」

『名前なんて、知らなくて良いよ』

「そういうわけにはいきません！私を助けてくれた人ですもん」

『助けた、ねぇ…』

車の運転をする彼と助手席の間から顔を覗かせれば、ちゃんと座りなさい。と怒られた。

その声はどこか優しくて、第一印象で恐怖を覚えたのが申し訳なく感じてきてしまうほどだ

私を地獄から引っ張り上げてくれた人の名前ぐらいは知っておきたい

「あ、私は篠宮Aです」

『…俺は川﨑皇輝。呼び方はなんでも良い。どうせ長くは持たないし』

「皇輝さんは私の命の恩人だから…皇輝さんが許してくれる限り一緒にいたいです」

『…ほんと、幸せな脳だな』

「へ？」

ボソッと呟いた言葉はよく聞こえなかったけど、決して良いことは言ってないんだろうな。

表情を見ればすぐにわかる。それに悲しさを覚えながら、私は同時にこの人をもっと知りたいと思った

…皇輝さんは何故、あの場にいたんだろうか