彼は神の子悪魔の子 (ページ10)

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ぐっ？！ページ10

しばらく2人の交戦が続いていたが、明らかにAは劣勢だった。1週間、飲まず食わずで睡眠もよく取れていない。
Aもやはり、人間である。死ぬ時は死ぬ。
今、Aは人生の分岐点に来ていた。
ここで少しでも気を緩めれば相手の技量なら一瞬であの世ゆきだろう。
辛く、苦しい思いから逃げ出せるだろう。

A) (…しかし！俺はまだ、死ねない。死ねない理由がある！)

意識が朦朧とし、体もうまく動かない、そんな状況でそれでも生き残ろうと生に縋る様は、何よりも人間らしさを強調していた。

Aは自分でも知らず知らずのうちに体に不思議な熱を集めだしていた。

A) (動ける。まだ、俺は戦える。)

その時、Aの容貌が変わり始めていた。
瞳の色が蒼く、髪の色が金色に。
しかし、その変化に気づいたのは相手の男のみであった。

？) …？！

ｻﾞｯ

男は目の前の少年の容貌の変化よりも他の変化に思わず身を引いた。

？) (こいつ、まだこんなに力が…？)

つい先程まで自分が押していたはずだった目の前の少年の生命エネルギー、念の量が容貌の変化と同時に跳ね上がったのだ。

？) …これは意外とキツいかもなぁ

青年がそう呟いたときだった

？) イルミ、いつまで遊んでいるんだ。

Aと青年は同時に声の方に顔を向けた。どちらも戦闘中で周りに気を配っていたはずなのに、気づけなかった。
そこには、白いウェーブがかった長髪の屈強な男が立っていた。その男の眼光は鋭く、低く重厚な響の声は2人の言動を一瞬だが抑圧した。

？) …親父。
手伝ってよ、少してこずってるんだよね。
俺はミケに餌をあげに来ただけなのにさ。

イルミ、と呼ばれた青年はその白髪の男に助けを求めた。もちろん、本気で言っているのかは謎だが…

屈強な男がイルミに注意を向けた瞬間、Aの足は白髪の男に向かっていた。
持っていたナイフを素早く投げ、避けた方に回り、回し蹴りを食らわせた。
そして倒れた男の上体に飛び乗り地面にまた蹴りつけた。そしてダメ押しにナイフで首を切りつけた。
切りつけられた、はずだった。
しかし、Aのナイフは男の表皮で止められていた。

A) (なんて硬い皮膚、いや、筋肉か？！)

Aは驚きを隠せなかった。と同時に危険を察してナイフを捨て距離をとることにした専念した。この男から離れなければ。という危機察知能力が働いたのだ。
しかし、一瞬の動揺が命取りになった。

ｶﾞｼｯ

A) ぐっ？！