(刀剣乱舞)無職ですが、何か？4(え？モテ期のゲシュタルト崩壊？) (ページ27)

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そっと側に寄り添ってページ27

「あんなに怒らなくても…」
あれから薬研にそれはそれは可愛がられました、頭を撫でられたり手に口付けられたり喉の下を猫のように撫でられたりと、言葉にするだけで恥ずかしくなるようなことを小一時間ほどされて真っ赤な顔で部屋から出る羽目になった
「ん？」
部屋に戻る道すがら、ふと視線の先には蒼色の狩衣が風にはためいている姿が見えた。薬剤室は湿気があると駄目になる薬剤が多いので風の通りが良い裏庭側に面している。裏庭側の縁側に佇んでいたのは三日月だった
三日「…」
虚空を見つめるような視線は万物を見透かすようで、なんの揺らぎもない湖面のようであった。にこりともしない無の表情は美しいながらも人ならざるものという印象が強く作り物のようだ
「…三日月さん」
声をかけると三日月はゆっくりと此方を振り向いた、その所作はいつ見ても皮肉な程に流麗である。しかし何時もなら直ぐにAに気付いた三日月が気付かなかったのが引っ掛かった
三日「Aか…久し振りよな。どうだ、俺達から開放された日々は…安息であろう？」
「まぁ、自由がない生活は息が詰まるでしょう？あの部屋から出て、外の空気を吸って日の光を浴びて…皆に挨拶をして…毎日おんなじ事の繰り返しだとしてもそれがかけがえの無いものだって」
三日「…何故…声をかけた」
「え…？」
三日「また捕まるかもしれぬ、恐ろしくはなかったか？顔も見たくなかったのではないか？…それならば知らぬふりをして通り抜けれるようにしておったのに」
「…ぁ…」
態と三日月はAに気付かぬふりをしていたのだと知った。Aに逃げ道を用意するなんて三日月らしからぬことだった
三日「…もう良い」
話を終えようと言うように縁側に座り、また遠くを見つめる三日月に
「…」
その表情が無というよりも寂しさや悲しさを湛えているように見えて、そう思ってしまったら放っておくことが出来なくて、本当は三日月の配慮を汲んで去るべきかもしれないがそれでも隣に座った
三日「…A」
まるで聞き分けのない子供を諭す様な声色で名前を呼ぶ三日月に
「私が今ここに、三日月さんの隣にいたいと思ったの。それもまた自由に出来てる結果ね」
三日「…」
Aの言葉を聞き、無理をせず自らの意思で座ったと理解した三日月は口を閉ざしそれ以上何か言う事はなかった
「…」
そっと三日月の肩に頭を預け、寄りかかる。側にいるよ、こんなにも近くにいるよと伝える様に。寂しがらないでと温もりを分けた