#498 ページ22
「そこから先は簡単でした。来葉峠の一件後、その少年の周りに突然現れた不審人物を捜すだけ……そしてここへ辿り着いたという訳です」
うっすらと微笑む安室さんを見るに、どうやら自分の推理通りだと確信してるらしい。眼前の昴さんを睨みつけながら、足を組んでソファの肘掛けに寄りかかっている。
「あの少年と家主の工藤優作がどういう関係かはまだ分かっていませんが、あなたがあの少年のお陰でここに住まわせてもらっているのは確かのようだ。そして──」
体を強ばらせる私の視界に、安室さんの見透かすような視線がばちりと合わさった。
「最も驚いたのは貴女の存在でしたよ、Aさん」
遂に来たなこの展開……!
無意識に表情筋が強ばる。さっきまでは辛うじて知り合い同士の世間話だったのに、一瞬にしてお茶の間の空気は尋問室に様変わりだ。
「Aさんが元々住んでいたアパート、燃やされてしまったそうですね?」
「ああ、それ自体が仕組まれていたとは言いません。事件と関係者は確認済みですし……ただその後、貴女はこの家に住む事になった。何とも都合のいい話だ」
対沖矢さんへの怖い表情とは裏腹に、私の方を見る時はやけに自然体に見える。責め立てるような雰囲気はない。
私の反応を探る訳でも無く、つらつらと言葉を並べ立てる。
「相手は家を失くした一人暮らしの少女……制御するのも容易な上、退路を断つ材料はいくらでもあったでしょう」
「一般市民の彼女を巻き込んでしまえば、素性の知れない男でも周囲に怪しまれるリスクは激減……結果効果は絶大。今までさぞ動きやすかったでしょう?」
沖矢さんを睨みつけるような鋭い目つき。その声色や表情からは、「怒り」が込められている事がはっきり感じられた。
「わっ……」
「そんな男の傍にいる事は危険以外の何物でもない。誰かが保護をしなくては……ねえ、Aさん?」
手首を掴まれて、目線を合わせられて、ニッコリと笑う安室さんが不安げに揺れている私の目を見た。
……2、3秒間を置いて、だんだん思考が追いついてくる。
その、つまりアレかな。
秀さんが自分の保身目的で、しかも脅して私と一緒にいると思ってるとか?
「(……)」
半ばずっとパニック状態だった頭の中。それがスゥッと冷えていくのが分かる。
うるさかった心臓の音も、マカデミー賞のライブ中継も、段々と聞こえなくなっていく。
無音になりかけた部屋ではっきりと聞こえたのは、コトリと置かれた安室さんの携帯の音だった。
2023/06/11
気づいたら時間飛んでやがる
314人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
色 - すっごく!!面白いッス!!!それにこんなに長く続けてくれている方は初めてで長く楽しめるのが嬉しいッス!!!主人公ちゃんの秘密とかすごい気になるし、このくっついてそうでくっついてないところとか、すげえキュンキュンくるッス!!!俺、感動ぅ(´;ω;`)って感じッス!! (8月2日 21時) (レス) @page34 id: 9c759aa54d (このIDを非表示/違反報告)
さくら(ふぶきち)(プロフ) - 夢さん» 思い出して貰えてとても嬉しいです……更新頻度も展開も未だ亀ペースでホントに申し訳ない……また遊びに来て下さい! (5月5日 0時) (レス) id: 8478d38e5a (このIDを非表示/違反報告)
夢 - コナンくんの映画を見てこの夢小説をまた読みたくなって一気読みしましたwこれで10週目くらいです…毎度毎度きゅんきゅんが止まりません!!!更新無理なさらず頑張ってくださいね! (2023年4月21日 7時) (レス) @page25 id: 4569fd3783 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(ふぶきち)(プロフ) - ユナ@前垢消えたさん» 一気見お疲れ様です。そして嬉しいです、ありがとうございます。 (2023年4月20日 21時) (レス) id: 82d53c230a (このIDを非表示/違反報告)
さくら(ふぶきち)(プロフ) - 紅葉さん» ありがとうございます。私としても、大変光栄なコメントありがたく感じています。今後も更新頑張っていきますね。 (2023年4月20日 21時) (レス) id: 82d53c230a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さくら | 作成日時:2022年5月29日 0時