【名探偵コナン】自宅にカチコミされるとか聞いてない【ギャグ/赤井秀一】

#490 ページ14

「ところで優作さん、ノミネートされたのってどの作品関係ですか？」


　開幕間近となったマカデミー賞授賞式では、数々の映画作品が名を連ねている。
　恥ずかしながら今年度の映画にほとんど手をつけてない私には、優作さん原作の作品がないことくらいしか分からなかった。流石に闇の男爵(ナイトバロン)映画化してたら絶対見に行ってるもん。


「んー……と、ああ、あれだね。“緋色の捜査官”」
「エ゛」


　名前を聞いた瞬間、速攻フリーズ。
　“緋色の捜査官”といえば、米国で公開した途端に爆発的ヒットを誇り、そのストーリーと完成度の高さから、ありとあらゆる映画界の数字を塗り替えたとか何とか──とにかく凄ッッまじいニュースが日本でも連日報道されてるヤベー作品だ。
　確かに脚本が日本人でどうのとかで話題になってた気がするけど、それが家主の話だったとは……！！


「あ……あの映画の脚本、優作さんだったんですか！？凄すぎません！？」
「ハハ。でもこっち(日本)にはまだ上陸すらしてないし、いきなりノミネートっていわれてもねえ……」


　反響がいいのも作ってくれた人達が凄いだけだよ、とケラケラ笑いながら言ってのける優作さん。


「とと、とにかく日本で公開されたら絶対見ますね！どんなお話なのか、今から待ちきれないくらい楽しみです……っ！！」
「あ、なら丁度良かった」
「はい？」


　ポン、と私の両手の上に置かれたのは一冊の単行本だった。洋書のような重厚な装丁が施されていて、タイトルは──


「“The agent of(緋色の) Scarlet(捜査官)”……え、あの、これって」
「本当は私の手元に置いておく用で作ってもらったんだけど……内容は頭に入ってるから」
「い……いいんです、か？」
「これは君だけの特別品だ。我々のせめてもの気持ちとして受け取って欲しい」


　そう言うと、二重のマスク越しだけど、優作さんのにっこりと柔らかな微笑みが降ってきた。


「いつも新一(息子)の世話を焼いてくれて感謝しているよ」
「……ふふ、そういう事でしたら、遠慮なく！」


　こうして貰った「緋色の捜査官」を、私は自分の命より大切に思えるくらい、ギュッと両腕で優しく抱きしめた。


【ちなみに“緋色の捜査官”のノベライズ単行本限定試し刷り初版本、世に出すと最低でもウン十万(超プレミア価格)で取引されるレベル。その事実をA本人が知るのはもっとずっと先の話……】


(あ、あと有希子も君に迷惑かけているようだし……)
(あ〜〜〜まあ……)

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2023/06/11

気づいたら時間飛んでやがる

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