【愛されたい】審神者なんてやらなきゃよかった。【審神者】

後悔した３５ ページ39

薬「...ん....と..い..」

あ「え、？」


キツく、ぎゅっと噛み締められていた唇が
微かに動いた。

でも、発せられたはずの声は

俺の耳に届かず消える。


あ「...薬研？どうかしたか？」

ここで、冷静に返せる自分に
心底幻滅した。


自分ってやつが、やっぱり
一番醜いんだと確信させられた。



.



あ「体調、悪いのか..？」


そっと、優しく
頬に触れた。

....直ぐに離したけれど。



薬「＿＿＿＿っ、違う！」

あ「いっ...！」



パシンっ、と弾かれた手が

じんじんと痛んだ。



薬「あ、いや、その...っすまない」

我に返ったのか、
突然焦り出した薬研に

俺は笑いかけた。

あ「いいんだ、気にすんな。」


何故か悲しい顔をされたけど

なんでそんな顔されたのか、
俺には分からない。


あ「そういうときも、あるよ」


痛い。そう思いながら
言葉を紡いだ。


というか、ずっとこの体制だったからなのか
押し倒された衝撃からなのか


そろそろ背中が痛くなってきた。

それに加えて、半分
薬研の体重が俺にのしかかってくる。

結構きついものだ。



すると


薬「悪い...今退く」


そんな様子に気がついたのか

薬研はゆっくり俺の上から退くと


少し離れた縁側に、腰掛けた。

俺も、少し離れて座った。



薬「取り乱してすまなかった。
大将にも、言わせたくないことまで
言わせちまって本当に悪かった。」


目元を赤く腫らして
笑いかけられても

ただ胸が痛くなるだけだった。

やるせない気持ちと、切ない気持ちがごった返すような、そんな感じだった。


あ「いや、大丈夫。
俺の方こそ、色々悲観的なことばっかいって悪かった。嫌だったよな、全部
忘れてくれていいから」

俺は
さっ、と池に目線を移した。


きっと、あのまま薬研の顔を見てたら
俺はまともに話ができなくなってた筈だから。


薬「なぁ、大将...
一つだけ、言いたいことがあるんだ。」

あ「うん」


今、薬研はどんな気持ちなんだろう。

どんな気持ちで、俺に話をしているんだろう。



そして、



.



薬「俺っちは、
アンタの母親を...捨てたんだ。」



.



どんな気持ちで
それを、口にしたんだろう。

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