あんたの笑顔が。【越前リョーマ】 (ページ10)

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俺がずるいってことは自分自身が1番わかってる。

Aが竜崎桜乃のことを本気で好きだということは知っていた。心の支えになっているということも。
クラスの奴らが俺とAが両思いだと勘違いしてることも。

あんなでっかい声で話してて、気づかないわけがない。気づいてないのは彼女だけだった。

だからチャンスだと思った。

俺は竜崎桜乃に近づいては仲良くする素振りを見せる。
彼女はそれをみて悲しそうな顔を見せた。

案の定、Aのことが大好きなクラスメイトたちはそれに怒る。
俺と彼女の仲を邪魔しようとする竜崎を陥れた。
竜崎をいじめて、無視して。

クラスメイトは揃ってこういった。
「越前とAに近づいたら痛い目を見る」と。

こうすれば無理矢理でも彼女から竜崎桜乃を遠ざけることが出来ると思った。

俺が手を下さずとも、彼女たちの仲を引き裂くことができると思った。

それでもなお、竜崎はAと仲良くした。

そんなことしても、日に日に傷は増えるだけなのに。居場所がなくなるだけなのに。

ある日、竜崎の机にはたくさんの悪口の紙が置かれていた。我慢できなくなったのかAに声にかけられると教室を飛び出した。
それを追いかけようとするAを止める。

「俺が行く」

そう言えば彼女は悲しそうに「桜乃ちゃんをお願いね」と笑った。

追いつき彼女の肩を掴むと、こちらをむく。

竜崎は泣いていた。

あいつの気持ちは竜崎のものなのに…
それなのに泣いているこいつに腹が立った。

「ねぇ、Aに近づくのやめてくれない？竜崎のせいであいつが白い目で見られてんのわかんないの？」

そう言い残すとその場を立ち去る。

だからそのあと竜崎桜乃がどんな顔をしていたのなんか知らないし、見てない。

こう言えばきっと竜崎桜乃はもう近づくのを辞めると思った。