-4 ページ45
かっかっ顔が近いし胸が当たるしあと中学二年生なのにすごい軽々しく持ち上げられて逞しさが分かってしまってなんか、こう、恥ずかしいし居た堪れない!
暴れようにも身体が筋肉痛で痛いのは確かなので動けない!
何となく息を止めて必死に彼の顔から目を逸らした。なんだこれなんだこれ。
確かな足取りで運ばれたと思うと、壊物を扱うみたいにそっとベッドに下ろされた。腕を彼の首から外す。
「おい、さっきより顔が赤くないか?熱か」
「大丈夫です‥‥元からこんなのです‥‥」
「そうか‥‥?」
不審そうな彼に私はゆっくり首を振った。何も、言えない。
彼は、私のことが心配で練習を休憩して来てくれたらしい。わざわざ申し訳ない。でも何で一人?鬼道さんに聞いても「妙に他チームメイトに勧められた」だって。いや、確かに鬼道さんに私が過剰反応してるのは認めるけど何か勘違いされてない?すごい居た堪れない。助けて兄さん。
他愛もない話を続けていると、ふと前から少し懸念していたことが頭に過った。
彼は、私に好意的に話をしていてくれる。友人だからと、楽に話してくれているのは分かっている。
ただ、今回私が潜入して直接薬を破棄するにあたっての一件。
景虎さつきというのは、私のことなのだと思う。
これはもう私の中で明らかになっている。ただ、そうだとしたら。
私は、今回間接的にとはいえ、影山に協力して世宇子中学へドーピングを行なっていた人間になるのだ。
しかも、原作よりも酷い副作用を伴った薬の開発者。
もし、景虎さつきのことがこれから先明らかになった時、私は今まで通り彼等と共にいれるだろうか。
何より──私自身は。
「‥‥大丈夫か?」
はっとする。いつのまにか考え込んでいたらしい。
「やはり熱が上がってきたのか?」
「いえ‥‥」
どう答えることも出来ずに曖昧に笑うと、静かに彼に見据えられる。彼は少しこちらを注視した後、ゴーグルを取った。えっ、取った。こちらが驚いていると、綺麗な赤い目が私を見ていた。
「顔色が悪いな」
そうか。ゴーグル越しだと色が分からないから。
額にそっと手が添えられる。額に当たる温もり。
この優しさが、もし思い出したら、私が一体誰なのか分かってしまったら。
そう思った途端、泣きたい気持ちになってしまった。
「‥‥どうした?」
動揺した気配がしたあと、柔らかい声が耳を打った。私は布団に蹲ってしまう。
118人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒牡丹(プロフ) - 焔さん» 好みと言っていただけて本当に嬉しかったです。書けないことになれば、とにかく頭の中に思い描いていたネタだけでも箇条書きにしてでも投稿はするつもりです。嬉しく優しいお言葉、本当にありがとうございます。 (2020年7月23日 12時) (レス) id: 51616291f0 (このIDを非表示/違反報告)
焔 - 黒牡丹さん» レスありがとうございます。黒牡丹様が帰ってきてくださって、今の心境を教えてくださっただけでも嬉しいです。ありがとうございます。 (2020年7月14日 22時) (レス) id: 3ce071c9ce (このIDを非表示/違反報告)
黒牡丹(プロフ) - 焔さん» コメントありがとうございます。お話の続きを私自身が書くのは無理だと悟ってしまいました、申し訳ありません。なんとかして、彼女の物語を完結させたいと思います。どうか、よろしくお願いします。 (2020年7月13日 12時) (レス) id: cd13c32878 (このIDを非表示/違反報告)
黒牡丹(プロフ) - 夜さん» コメントありがとうございます。何度もコメントしてくださっていたのに、本当に申し訳ありません。私の手から離れるかもしれませんが、それでも一度思い描いた物語として皆様の元に届けたいと思っています。読んで頂いて、本当にありがとうございます。 (2020年7月13日 12時) (レス) id: cd13c32878 (このIDを非表示/違反報告)
黒牡丹(プロフ) - 翡翠さん» コメントありがとうございます。こんな形でのコメント返信申し訳ありません。せめて、物語として皆様の目に触れるようにしたいと思います。 (2020年7月13日 12時) (レス) id: cd13c32878 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ