夢の中で-3 ページ32
「…………けるな」
「ちょっと」
「ふざけるなよあの男ッ!!!!」
びりびりと大声が響く。伸ばした手を引っ込めるくらいの大声。
髪をぐしゃりとかき上げた彼女は、今まで見たことがないほどに怒りの表情を浮かべていた。
「ふざけるな、ふざけるなふざけるなふざけるな!! あんなものを十代前半の子供、しかも第二次成長期の人間に与えるだと!? あんなものを与えていいはずがない!! デメリットの話は散々に書いただろうが!!!」
声を失うほどの怒気。完全に我を忘れているらしく、感情のままに声をあげているようだった。
「はっはは、あの男、実験台に丁度いいからと与えたのか、はは、手駒か!? ほんっとうに子供を手駒としか思ってないんだなあの男は!! 副作用で子供がズタボロになっても知ったこっちゃないと!!!」
「──副作用?」
聞き逃してはならない単語に反応する。
「っああ、くそ、こんな、そうか、見通しが甘かった、十分に考えられることだった、ここまで何も無かったから、こんな、こんなことに」
段々と怒気が萎んでいく。身体を屈め、頭を抱えたまま俯いて、ぽつりと声が落ちる。
「これも、私のせいか」
思わず顔を歪める。彼女は、高慢で自信ありげなのに、どこか自虐的だ。どうやったらこうも変に育つのか。
……私のせい、ということは。
「落ち着いた?」
「……ああ。すまない、大丈夫だ。取り乱した」
一度大きく息を吸ったかと思うと、顔を上げて真っ直ぐにこちらを見た。緑色と黒色の瞳がじっとこちらを見る。
「……話してくれるよね」
疑問形ではなく確定。彼女もこうもなった以上話すしかないと思ったのか、一度目を閉じてから頷いた。
「まず、天使のロゼについて。……神のロゼと呼ばれているようだが、それには飛躍的な身体能力上昇作用と興奮作用、酩酊がある。一種のドーピングだな」
「……そう。原作には?」
「出ていない。別の薬だ」
きっぱりと答えられた。私はそれだけで理解をする。唇を噛んだ。
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黒牡丹(プロフ) - 焔さん» 好みと言っていただけて本当に嬉しかったです。書けないことになれば、とにかく頭の中に思い描いていたネタだけでも箇条書きにしてでも投稿はするつもりです。嬉しく優しいお言葉、本当にありがとうございます。 (2020年7月23日 12時) (レス) id: 51616291f0 (このIDを非表示/違反報告)
焔 - 黒牡丹さん» レスありがとうございます。黒牡丹様が帰ってきてくださって、今の心境を教えてくださっただけでも嬉しいです。ありがとうございます。 (2020年7月14日 22時) (レス) id: 3ce071c9ce (このIDを非表示/違反報告)
黒牡丹(プロフ) - 焔さん» コメントありがとうございます。お話の続きを私自身が書くのは無理だと悟ってしまいました、申し訳ありません。なんとかして、彼女の物語を完結させたいと思います。どうか、よろしくお願いします。 (2020年7月13日 12時) (レス) id: cd13c32878 (このIDを非表示/違反報告)
黒牡丹(プロフ) - 夜さん» コメントありがとうございます。何度もコメントしてくださっていたのに、本当に申し訳ありません。私の手から離れるかもしれませんが、それでも一度思い描いた物語として皆様の元に届けたいと思っています。読んで頂いて、本当にありがとうございます。 (2020年7月13日 12時) (レス) id: cd13c32878 (このIDを非表示/違反報告)
黒牡丹(プロフ) - 翡翠さん» コメントありがとうございます。こんな形でのコメント返信申し訳ありません。せめて、物語として皆様の目に触れるようにしたいと思います。 (2020年7月13日 12時) (レス) id: cd13c32878 (このIDを非表示/違反報告)
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