七十 ページ20
「ぐっあぁっ!」
俺の左腕に刺さった刀がぐしゃりと音を立て抉っていく。
やっと抜かれた刀。鮮やかな色をした血がべったりとついていた。
腕に力が入らない。
「利三様…!」
現れた兵と話し始めた利三。今のうちに少しでも逃げないと。
右腕で支えなんとか立ち上がり、速く歩く。長い裾は邪魔で転びそうになった。
誰か助けてくれ。
甘い考えだ。俺は死にたくない。怖い、ただの人間だ。
叶いもしないことを願う。
「信長ッ…助けて…」
「待って下さい、龍亜殿。今、道三殿のところへ逝かせてさしあげます」
「ッ!!」
振り上げられる刀、朦朧とする意識。
もう、無理だ。
俺は目を閉じた。何て最期だ。華々しくも何ともない。
ぐさりと刺さる音、がその後に人が倒れる音がした。
目を開けると床には利三の首があった。
俺は、腰を抜かして床に座り込んだ。
「信長…?」
顔をあげると、苦い顔をした信長が立っていた。信長は刀をがしゃりと床に落とし、俺の身体を抱き締めた。
「何でッ…来たんだよ…信長っ。俺なんか…」
ぼろぼろと溢れた涙は信長の肩に落ちていった。俺が言葉を溢していくうちに信長の抱き締める手は強くなっていった。
「信長…っ…会いたかっ…た」
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俺が目を覚ましたのは数週間どころではなく、一ヶ月後。
それが今、何故かずっと側室の女が俺のことを見ている所為で、目が開けられない。
「帰蝶様、全部私の所為ですよね」
すごくいい娘だ。うん、ごめん出てってくれ。
「すみません…」
俺が意地悪してるみたいじゃねぇか。すると、信長が部屋に入ってきた。…耳を塞ぎたい。
「コイツは起きたか」
「いえ、まだ…」
「そうか」
薄目でそっと見た。…恋人成り立てとか新婚夫婦ってこんな空気だっけ。
確かに信長はそういうタイプじゃないけど。女の方だよ、初々しくないっつーか。嬉しそうでもないっつーか。
「幸とはどうだ」
ん?幸?信行…殿?
じっと見ていると女はぽーっと頬を紅くした。
え?
「あ、えっと赤子を…」
「はあぁぁぁっ!?そっ、どういうことだ!」
「き、帰蝶様…!」
え、何々。俺は何に悲しんでたの。
「何だ、起きていたのか貴様。」
「悪いのか!ッ痛ってて…で?どういうことだ、信長の側室の腹に幸の子だァ?おーおーなんだよ、不倫か?ダブルか?めでてぇな、オイ」
混乱で何が何だかわからなくなった。
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大手裏剣(プロフ) - 月夜さん» いえ!こちらこそありがとうございます。10月始めまでには公開出来るように頑張ります! (2019年9月28日 22時) (レス) id: 71bd857e36 (このIDを非表示/違反報告)
月夜 - 大手裏剣さん» あ”あ”あ”(( レスありがとうございます!! 続編、楽しみにしてます^^ 体に気をつけて頑張ってください!! (2019年9月26日 22時) (レス) id: fafc33f615 (このIDを非表示/違反報告)
大手裏剣(プロフ) - 月夜さん» おわわ!!めっちゃ嬉しいです!私も信長様好きです。惚れました。恐らく、近頃続編が公開出来ると思います!楽しみにして下さると嬉しいです!! (2019年9月26日 22時) (レス) id: 71bd857e36 (このIDを非表示/違反報告)
月夜 - 一気読みしました!! オリジナルBL読むの初めてだったんですが……………。 どちゃくそ好みでした(( いや、信長様イケメンすぎか。惚れるわ。更新頑張ってください!! 応援しています^^ (2019年9月26日 18時) (レス) id: fafc33f615 (このIDを非表示/違反報告)
大手裏剣(プロフ) - 月希さん» 出来れば…私のボードでお願いします。リクエストはお受けしますよ。 (2019年8月8日 11時) (レス) id: 71bd857e36 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:大手裏剣 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/oh19years/
作成日時:2018年9月14日 21時