病み少年に会いました［BL］【オリジナル】

25.嫌い ページ27

「……夕闇咲夜」

好きになれない、嫌いな奴の名前を呟く。

……あいつだから嫌なんだ。

別に他の誰かなら兄さんに近づいたっていい。それこそ、優しい人とか、兄さんを絶対に幸せにしてくれるような人なら、仲良くしたって付き合ったって、なんの問題もない。

けどあいつは……夕闇はダメだよ。優しさなんて微塵も感じられないし、病んでるっぽいし……

しかも噂通りならあいつは自分の彼女をなんらかの方法で殺してる。もし噂どおりでなくとも、殺してると思われるような奴ではあるということ。実際見た目だけなら確実に病んでる。そんな奴を兄さんに近づけるわけには……

「……奏太？」
「あ、俊くん」

後ろから声がしたから振り返ると、そこには俊くんがいた。俺が笑いかけると、俊くんは表情一つ変えず、いきなり質問してきた。

「今朝、どうしたんだ？」
「……別に。俊くんには教えない」
「はぁ……俺と二人だと相変わらず冷たいな」

クラスメイトや兄さんの時と態度を変える俺を見て、俊くんは悲しそうに言った。

……別に俊くんが嫌いなんじゃない。俊くんの前では素の僕でいるだけ。

というのも、俊くんには俺の裏の顔がバレてる。兄さんと釣り合わないくせに寄ってくる女を追い払ってることとか、自分で可愛く振る舞えば人が寄ってくると分かった上で、それを利用してることとか、ね。

俊くんは、みんなが絶対知らない俺の裏の顔を全部知ってるんだ。

本当なら、誰かに言わないように釘さしたり弱み握ったりしておきたいところなんだけど、俊くんは兄さんの親友だし、俺の幼馴染でもある。

それに、彼は絶対にそういうヤバイ部分を人に広める人じゃない。だから釘さしたり弱み握ったりは一切してないし、する必要がない。

「なぁ、奏太。今日朝一緒に登校しなかったの、夕闇咲夜が関係してるんだろ」

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