病み少年に会いました［BL］【オリジナル】

24.呼び方 ページ26

「だからやめろって……！」

俺の手首を掴む夕闇。

「じゃあ、夕闇も、アンタって呼ぶのやめて」
「だからそれは……！」
「風原優人」
「え？」

泣き顔のまま顔を上げた夕闇に俺はにっこりと笑った。

「風原優人だよ。俺の名前。先輩って呼びたくないならさ、名前で呼んで」
「え、えぇ……？」
「ほら」

俺が呼ぶように促すと、夕闇は少し迷ってから呼んでくれた。

「……風原、さん」
「あはは、めちゃくちゃ他人行儀。優人でいいよ」
「……優人さん」

少し照れくさいのか、目をそらして名前を呼ぶ夕闇。

「お前、普通にアンタとか言ってたくせに、名前呼びさせたらさん付けになるんだね。しかもすごい慣れてなさそう」
「……うるさい！！」

夕闇は、怒ったようにそっぽを向いた。

あれ、言い過ぎたか……？

俺が謝ろうか迷っていると、夕闇が言った。

「あの……」
「何」
「先輩って呼ばれたいなら、呼んでもいいよ」
「え？」

予想していない言葉に、少しばかり驚く。

「……ただし、条件がある。俺の、先輩に対するイメージ変えてよ。先輩っていう存在のイメージが、俺にとって悪じゃなくなったら、俺、優人さんのこと、先輩って呼んでもいいよ」

……それもう俺のためと見せかけた夕闇のお願いじゃん……

と、内心ツッコミつつ、俺は可愛い後輩にはてんで弱いのか、

「……わかったよ、頑張る」

なんて答えてしまった。

そしたら夕闇は、本当に嬉しそうな顔をして、

「うん、頑張って」

と、笑った。

ずるいなぁ……

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