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「…おかえり」
『……っ、ただ…いま』
「ホンマに…もー……」
『鬱さん、私』
『私……っ、思い、出したんです』
震える声
後ろから追いかけてきていたしんぺい神さんであろう人の足が見えて、身体を離す
鬱さんは私の顔を見て何かを察してくれて
優しく頭を撫で「……そっか」と泣きそうな顔で微笑んだ
「思い出しちゃったか、そうか……そっか…」
『…っ、ちょっ……鬱さん!?』
「んー…ハグで足りると思ったん?」
『まっ…ここ、廊下……ひっ!?』
頭を撫でていた手が私の首筋へ
数回往復したと思えば顔が近づき、頬に数回キスが落とされる
空いた手が私の腰に回されグッと距離が近づいた
かっこいい彼の顔
その顔を見るだけで頬が赤くなる
思わず距離を取ろうと鬱さんの胸を押すが、止まらないリップ音
『っ、そ、ういえば、お風呂入ってないから…って聞いて下さいっ!!』
「ええよ、そっちの方がAちゃんの匂いするやん……あー!安心してな?寝てる間ちゃんと体拭いてあげたから」
『は!?最低…いやそういう意味じゃな……っ』
見てる
見てるから!
そこでしんぺい神さんが、見てる!
「Aちゃん…」
『さ、盛らないで…っしんぺい神さ…助け』
しんぺい神の方に顔を向け助けを求めようとすれば、彼は楽しそうに笑っていて
スルりと私の髪を撫でた後に、鬱さんがその手を叩き「触らんといて」と威嚇をする
「あらら…Aちゃんの顔真っ赤やん…ほら大先生、この顔あんまり周りに見せない方がええんやない?」
「え?」
『…っ、だから』
「部屋、行こか」
ニコリと笑った彼は私を横に抱き上げ、足が地に着かない事が怖くてしがみついた
『うわっ……!?あ、歩けます、歩けますから!!』
「大先生、あんまり無茶させちゃあかんで〜病人やからな」
私たちの後ろに立ち手を振るしんぺい神さん
いや、いやいやいや
ここは助けてくれるムーブだろ!?
そんな心の声は届かず、ふと鬱さんの方を見ると何だか安心したような顔をしていて
目の下が赤い
恐る恐るそれに手を伸ばせば「…ん?」と優しい顔で私を見た
『う、鬱さんって……本当に…ず、ずるい』
「えぇ…?そんなこと言わんといて」
『顔が良すぎ……』
「ふふ、Aちゃんは僕の顔好きやもんな」
部屋の扉を器用に開けた彼はスタスタと歩き、私をベットの上に落とし
「さ、いつものさせてな」
と満面の笑みでこちらを見た
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美雨 - 小説で久しぶりに泣きました。最高の作品でした。大好きです。 (7月26日 18時) (レス) id: c21832273f (このIDを非表示/違反報告)
はーな(プロフ) - 読み終わったあと感動で胸が締め付けられました。神作に出会えてよかったです!! (2022年9月2日 19時) (レス) @page27 id: e031897919 (このIDを非表示/違反報告)
海 - 泣けた。やばいですよもう。 (2022年8月14日 21時) (レス) @page27 id: 5511dd41f6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい - 感動してめちゃめちゃ泣いた.....しかもこの小説私の誕生日に作られてる、運命かな......... (2022年7月19日 21時) (レス) @page27 id: 4f57f42090 (このIDを非表示/違反報告)
あたり(プロフ) - 最近この界隈に戻ってきて転生と外せかのシリーズを読み返していたのですがこれは読んだことなかったなと気付き読み始めたら…感動しました……外せかはガチで泣きましたけどこの作品も相当良かった……なんで当時読まなかったのかが不思議です…ありがとうございました (2022年4月17日 12時) (レス) @page27 id: f83fcb16fe (このIDを非表示/違反報告)
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