＊ ページ3
.
自分のことのように喜んでいてくれていたのに、Aは急に声のトーンを落とした。
Aの体に回していた腕をほどいて、顔を覗き込む。
「なに、どうした？」
『………ん、いや………寂しくなるな、って』
弱さを誤魔化して無理に笑っているのは、もう俺に隠せないよ。
下唇をきゅ、と噛んでいるのを指でなぞってやめさせた。
「なんで？」
『…だって、これからは大きい事件を担当するようになるでしょ？
それに、2人でいる時とかもきっと呼び出されたりとか…
会える時間も少なくなるかもしれない。
そうなったら、………………寂しい』
「……じゃあさ、一緒に住む？」
『え？』
俺の思わぬ提案に、Aはパッと顔を上げた。
あは、可愛い。
「今の俺らの部屋じゃ狭いから、新しい部屋2人で引っ越してさ。
そしたら一緒の家に帰れるし、
仕事以外の時間は全部、Aとの時間になるよ？
そのまま結婚しても、面倒じゃないし」
『……いいの、？』
じわ、とAの目の潤いが増していく。
「うん！もちろん。Aは嫌？」
そう聞けば、ふるふると全力で首を振ってくれる。
『……琢磨と一緒の家に住みたい…！』
「うん、住もう！……よし、じゃあ今から探そう！」
『え、今から！？』
「そう！早く引っ越したいじゃん？」
Aの手を引いてリビングに行き、パソコンを開く。
「どんなとこがいい？」
『ねぇ琢磨、私、ご飯作ってて、』
「火つけっぱ？」
『ううん、火は止めてある』
「じゃあ後で」
Aは急な展開に驚いているみたいだけど、俺は全然急じゃない。
なんなら、県警に行くから引っ越すってわけでもない。
最近ずっと考えてたんだ。
どうしたらAともっと長くいられるかなって。
今は一緒に帰ることくらいしかできてなかったから、一緒に帰れない日は寂しくて仕方なくて。
じゃあ、一緒の家に帰ればいいんだって。
なんでそんな簡単なことに気がつかなかったんだって。
お泊まりにしたって、こんな狭い家じゃ申し訳ないから、いっそのこと新しい家にしようって。
結局その日は夜遅くまで2人でパソコンの画面を見て、ああでもないこうでもないと言い合って、せっかくAが作ってくれてたご飯を食べるのは遅くなってしまった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1664人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なぽりたん(プロフ) - すみかさん» そうなんですね！知識が足らず申し訳ないです…ありがとうございます、すぐに訂正させていただきます！ (2021年9月18日 17時) (
レス) id: 978682becc (このIDを非表示/違反報告)
なぽりたん(プロフ) - すみかさん» ありがとうございます！先にパート5を単体で作成してからパート4に続編の設定をするとお気に入りが継がれるんですよー！ (2021年9月18日 17時) (レス) id: 978682becc (このIDを非表示/違反報告)
すみか(プロフ) - あと、一つだけ気になったことがあるので書かせてください！夢が叶う、の所森本刑事が県警に異動になったと言ってますが、警察官は元々県職員です。たぶん、県警本部、が正しいと思います！すみません、家族が警察官なので気になっちゃいまして^_^; (2021年9月18日 16時) (レス) id: 25c8e9c9aa (このIDを非表示/違反報告)
すみか(プロフ) - いつも楽しく読んでいます！他の作者さんだと自動的に続編がお気に入り登録されないのになぽりたん様だけ続きもすでにお気に入り登録されててびっくりしてます！何か設定があるのでしょうか？ (2021年9月18日 16時) (レス) id: 25c8e9c9aa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なぽりたん
| 作成日時：2021年9月18日 15時
