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「お酒でも入れま……」
「今日の昼見世」
うらたさんは、私の目は見ずにそう一言だけ吐き捨てた。ドキリと胸が鳴る。
「どうしてあんなに悲しそうな目をしてた?」
「……気付いていらしたんですか」
「まぁ、あれだけ目が合ったらな」
「酒は飲めないからいい」と言って、いつもの如く主の隣にいた私を避けて、正面に胡座をかいて座り直した。
真っ直ぐなその瞳に吸い込まれそうになる。
やはり、いつもの客とは違う。
身体目当てではない。
「私に、気に入られようとしないのですか…?」
「ま、切り札があと3枚残ってるからな」
「あの御三方ですか」
「よく見てるじゃねぇか」
ほかの主とは違って、私に気に入られようと媚を売ったりすることはない。いつもと違う様子に戸惑う私は完全に彼のペースに巻き込まれてしまっていた。
「赤髪の方が特に目立ってい………!?」
最後まで言いきる前に反転した視界。
小さな声にならない悲鳴を喉が鳴らした。
うらたさんは先程とは違う冷え切った目で馬乗りになり私を見下ろしていた。顔の横で掴まれて固定された両手はビクともしない。
初会では、身体を重ねることは禁じられている。
主たちは出入り禁止になることを恐れて、その決まりを破ることは決してない。
「なんで……っ、」
着物の隙間にするりと入ってくる手にビクリと身体が反応する。さっきとは比にならないその瞳の冷たさに心臓が音を立てる。
「うらたさ…ダメ、」
知らぬ間にうらたさんに対して心を許そうとしていた自分がいたらしく、他の主のように身体目当てで来られることに恐怖心を覚えていた。
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透(プロフ) - 牡丹一華。@坂田家さん» はじめまして。ありがとうございます…!そのお言葉が一番の褒め言葉です( ; ; )ご期待に添えるよう執筆頑張りますね◎ぜひこれからも読んでくださると嬉しいです!よろしくお願い致します (2020年1月11日 8時) (レス) id: b3a866b10f (このIDを非表示/違反報告)
牡丹一華。@坂田家 - 夜分遅くに失礼します。作品を読ませていただきました。この作品のページが進めば進むほどのめり込みました。続編も読ませていただきますね。 (2020年1月11日 4時) (レス) id: ca03128f9d (このIDを非表示/違反報告)
透(プロフ) - 舶(ハク)@月ノ山天文部さん» ありがとうございます!!書き方いろいろ工夫しながら書いてるので褒めてもらえてめちゃくちゃ嬉しいです(///)更新頑張りますね!これからもよろしくお願い致します!! (2019年5月16日 23時) (レス) id: b3a866b10f (このIDを非表示/違反報告)
舶(ハク)@月ノ山天文部(プロフ) - 誤字すみません……すごきではなくすごくです…… (2019年5月15日 1時) (レス) id: 7017cc79b6 (このIDを非表示/違反報告)
舶(ハク)@月ノ山天文部(プロフ) - お話すごく好きです!うらたさんかっこいい……更新楽しみに待っています、頑張ってください!あと書き方すごき上手くてとても読みやすいです(*´ω`*) (2019年5月15日 1時) (レス) id: 7017cc79b6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:透 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時:2019年4月27日 0時