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遂に頂上決戦が始まってしまったことを意味していた。私はただ1人、回り廊下で人にまみれた野を見つめていた。
そこには、あの四人の姿ももちろんあるわけで。
たくさんの足軽や武士たちを率いて馬に乗る彼らの無事をただ祈るばかり。
父親については、もうどうでもよかった。
ただ、杵築がこの戦に勝ち彼らが無事で帰ってくればそれでいい。父など、死んでしまったって別に構わない。
人間同士がぶつかり合うのを見ているだけで胸がいっぱいになる。
あまり見たくなくて、風景に背を向けて城の中へと戻ることにした。その途中、うらたさんたちが個々で寝ているのとはまた別の、4人の部屋がある。
入るなと言われている訳でもないが、あまり入らない方が良いだろうと思い今まで踏み入れたことがなかったそこを通り過ぎようとした、その時視界の端に映ったたくさんの紙が散らばる様子。
「なに、あれ……」
呟いた声が城の吹き抜けの廊下に谺響する。
静かに襖を開け、その紙へと視線をやると目に映ったのは全て似顔絵。それも、
「これ、わたし…?」
全部全部、描かれているのは私の顔。
きっと、父の圧力と吉原の力で捜索が進んでいるだろうとは予測していた。だけど、こんなにも多くの似顔絵を世に撒き散らしているなんて、夢にも思っていなかった。
吉原に売られた時点で普通の生活がもうないのは分かっていた。けれどうらたさんに助けられ、少しだけまた普通の生活を期待している自分がいた。
「なんでっ、…っあ」
涙が止まらない。
全国に私の顔が知れ渡り、もう一生普通の生活なんて送れやしない。どうせ私にはお金でも賭けられているのだろう。
うらたさんたちは、ずっとずっとこの事実を私から隠しておいてくれたんだ……
外から聞こえる敵国の男達の雄叫びが一層憎く思えた。
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透(プロフ) - 牡丹一華。@坂田家さん» はじめまして。ありがとうございます…!そのお言葉が一番の褒め言葉です( ; ; )ご期待に添えるよう執筆頑張りますね◎ぜひこれからも読んでくださると嬉しいです!よろしくお願い致します (2020年1月11日 8時) (レス) id: b3a866b10f (このIDを非表示/違反報告)
牡丹一華。@坂田家 - 夜分遅くに失礼します。作品を読ませていただきました。この作品のページが進めば進むほどのめり込みました。続編も読ませていただきますね。 (2020年1月11日 4時) (レス) id: ca03128f9d (このIDを非表示/違反報告)
透(プロフ) - 舶(ハク)@月ノ山天文部さん» ありがとうございます!!書き方いろいろ工夫しながら書いてるので褒めてもらえてめちゃくちゃ嬉しいです(///)更新頑張りますね!これからもよろしくお願い致します!! (2019年5月16日 23時) (レス) id: b3a866b10f (このIDを非表示/違反報告)
舶(ハク)@月ノ山天文部(プロフ) - 誤字すみません……すごきではなくすごくです…… (2019年5月15日 1時) (レス) id: 7017cc79b6 (このIDを非表示/違反報告)
舶(ハク)@月ノ山天文部(プロフ) - お話すごく好きです!うらたさんかっこいい……更新楽しみに待っています、頑張ってください!あと書き方すごき上手くてとても読みやすいです(*´ω`*) (2019年5月15日 1時) (レス) id: 7017cc79b6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:透 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時:2019年4月27日 0時