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「そんな傷だらけで、……どうしたん?」
すんなりと耳に入ってくるような、優しくて綺麗な声。
瞑っていた目をゆっくりと開けると、そこに映ったのは私の前にしゃがみこみ、心配そうな目でこちらを見つめてくる青年。……そして、その背後に迫ってくる吉原からの追手たち。
彼は、私の頬に手を添えるがそれどころではない私は、恐怖に怯えて声が出ない。
「……っ、あぶな────────」
カキンッ
刀同士がぶつかり合う音が私の声を遮るように暗闇に響いた。
視線はこちらに向けたまま、襲ってきた追手からの刀を彼は自らの刀で受け止めた。
「…急に襲ってくんのは反則ちゃう?」
はぁ、とため息をひとつついた彼は見張り人たちの方へ振り向き、襲ってくるそいつらに立ち向かう。袴の袖を夜風に靡かせながら相手からの攻撃を刀一本で受け止める姿は、その辺の武士と同じだとは思えなかった。
「お前に用はないんだ。その女さえ渡してくれれば」
「こんな怯えてんのに、渡すわけないやん」
「貴様…!調子に乗っているとタダじゃおかないぞ」
「なめてもらったら困りますよ」
苦笑いする彼の装いをよく見ると、どこかで見覚えがあった。
(あの羽織……うらたさんたちと)
よく見ると、中の袴もうらたさんや坂田さんと同じ柄だった。違うのは色だけ。
その刀と手甲に刻まれていたのは睡蓮の花。
刀を構える支配人。彼もゆっくりと刀を引き抜いた。風になびく袖から香る優しい匂いが私を包む。
「荒手はあんまり使いたくなかったんやけど」
そう言って、襲いかかってくる支配人たちの刀を受け止め、彼らに刀を向けた。
彼の耳元で揺れる耳飾りが月明かりに照らされる。
静かな夜の町に似合わない刀の音が響くのを、私はただ見ていることしか出来なかった。
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透(プロフ) - 牡丹一華。@坂田家さん» はじめまして。ありがとうございます…!そのお言葉が一番の褒め言葉です( ; ; )ご期待に添えるよう執筆頑張りますね◎ぜひこれからも読んでくださると嬉しいです!よろしくお願い致します (2020年1月11日 8時) (レス) id: b3a866b10f (このIDを非表示/違反報告)
牡丹一華。@坂田家 - 夜分遅くに失礼します。作品を読ませていただきました。この作品のページが進めば進むほどのめり込みました。続編も読ませていただきますね。 (2020年1月11日 4時) (レス) id: ca03128f9d (このIDを非表示/違反報告)
透(プロフ) - 舶(ハク)@月ノ山天文部さん» ありがとうございます!!書き方いろいろ工夫しながら書いてるので褒めてもらえてめちゃくちゃ嬉しいです(///)更新頑張りますね!これからもよろしくお願い致します!! (2019年5月16日 23時) (レス) id: b3a866b10f (このIDを非表示/違反報告)
舶(ハク)@月ノ山天文部(プロフ) - 誤字すみません……すごきではなくすごくです…… (2019年5月15日 1時) (レス) id: 7017cc79b6 (このIDを非表示/違反報告)
舶(ハク)@月ノ山天文部(プロフ) - お話すごく好きです!うらたさんかっこいい……更新楽しみに待っています、頑張ってください!あと書き方すごき上手くてとても読みやすいです(*´ω`*) (2019年5月15日 1時) (レス) id: 7017cc79b6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:透 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時:2019年4月27日 0時