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「何か用か?」
「今、誰かの話し声が聞こえたが……」
外に聞こえるのではないかと言うほど心音が大きく音を立てる。恐怖と緊張と、…坂田さんとの距離の近さに。
坂田さんの甘い吐息が首元にかかる。ピクリ、と彼の指が少しだけ動く。ドクドクという鼓動が感じられ、身が強ばった。
互いの空気が1枚の着物の羽織の中で混ざり合う。
坂田さんのふわりとした赤髪が首に触れた。
あまり感じられなかった彼の匂いがより近くで私に降りかかり、頭は破裂寸前だ。
咄嗟に坂田さんを庇ったものの、その体制を少しでも崩すとあちらに存在がバレてしまう。
もしも密会だと思い込まれれば、私の居場所は愚か、坂田さん自身も危険になる。
「聞き間違えではないのか?私は1人で眠っておっただけだ。」
「本当か?」
「私を疑っているの?」
「……承知しました。睡眠を妨げてしまい申し訳ありません」
見回り人の足音が遠くなるのを確認し、自分の身を起こす。グッと近かった距離が少し離れて、胸を撫で下ろした。
「ごめんなさい、無礼な真似を」
「ん、いや。ええよ」
首を振って乱れた髪を戻す坂田さんを横目で見ながら私も開いてしまった襟を整え直す。
さっきまで速かった鼓動が少しずつ標準の速さに戻っていくのを感じながら帯留めをとめた。
少しだけ気まずい空気が流れる。
「助けてくれてありがとう」
「いいえ、こちらこそ突然ごめんなさい」
「ううん、気にせんといて。でも、」
(でも……?)
頭にはてなマークを浮かべながら、立ち上がった坂田さんを見上げる。
彼は、私の背中に片手を回し、もう片方の手で私の後頭部を抑え、耳元でそっと囁いた。 耳に優しく彼の甘い息がかかる。
「俺が来たことうらさんには内緒やで!じゃあな」
またあの優しい笑顔で微笑むと、窓を開けて、夜の町へと消えてゆく。
.
.
「意外と積極的やねんな、君」
吐息混じりの声と、あの幼そうな性格からは考えられない妖艶で悪戯な笑みが未だに頭を離れない。
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……意味 : 男女の情交。密会。契ちぎり。
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透(プロフ) - 牡丹一華。@坂田家さん» はじめまして。ありがとうございます…!そのお言葉が一番の褒め言葉です( ; ; )ご期待に添えるよう執筆頑張りますね◎ぜひこれからも読んでくださると嬉しいです!よろしくお願い致します (2020年1月11日 8時) (レス) id: b3a866b10f (このIDを非表示/違反報告)
牡丹一華。@坂田家 - 夜分遅くに失礼します。作品を読ませていただきました。この作品のページが進めば進むほどのめり込みました。続編も読ませていただきますね。 (2020年1月11日 4時) (レス) id: ca03128f9d (このIDを非表示/違反報告)
透(プロフ) - 舶(ハク)@月ノ山天文部さん» ありがとうございます!!書き方いろいろ工夫しながら書いてるので褒めてもらえてめちゃくちゃ嬉しいです(///)更新頑張りますね!これからもよろしくお願い致します!! (2019年5月16日 23時) (レス) id: b3a866b10f (このIDを非表示/違反報告)
舶(ハク)@月ノ山天文部(プロフ) - 誤字すみません……すごきではなくすごくです…… (2019年5月15日 1時) (レス) id: 7017cc79b6 (このIDを非表示/違反報告)
舶(ハク)@月ノ山天文部(プロフ) - お話すごく好きです!うらたさんかっこいい……更新楽しみに待っています、頑張ってください!あと書き方すごき上手くてとても読みやすいです(*´ω`*) (2019年5月15日 1時) (レス) id: 7017cc79b6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:透 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時:2019年4月27日 0時