閑話 ページ10
今日はシキのお願いで、商店街へ買い物に来ている。切れてしまった味噌を買ってきて欲しいとのこと。
頼まれた時、トンファー磨きに夢中だった僕は断ろうかとも考えたんだけど、いつも口でお礼を言えていない分せめて手伝いくらいをしてあげようと思ってね、シキから貰った小銭をポケットに入れて、外まで来たってわけさ。
周りの人への感謝は忘れてはいけないよね。
しばらく歩いて、シキがいつも来ているという味噌専門店へと着くと、
「あれ?雲雀さんとこの子供じゃねえか?」
味噌屋のくせにやけに小麦肌の男が、喋りかけてきた。
シキってこんなところで僕の話をしていたのか。
「うん、まあ」
と無難に返し、「お使いか、偉いなあ」という某初めてお使いする番組のようなこと言ってきたので、「別に」とこれまた無難に返した。
とにかく白味噌を買いに来ただけなので、白味噌が欲しいといえばすぐさま男は用意してくれて、わざわざレジから出てきて手渡しでくれた。
僕は慣れない優しさをぎこちなく受け取りながら、小銭を渡した。
「はい、5円のお釣り。毎度ありっ」
威勢のいい声を聞きながら僕はそそくさと店を出た。
あとは帰るだけだと無意識のうちに早歩きになりながら商店街を歩いていると、チャリンと小銭が落ちる音。
まさか、とポケットに手を突っ込めば確かにさっきまであったはずの小銭がない。
バッと後ろを振り向き、歩いてきた道を目を凝らして見るが、見当たらない。
どこかの隙間でも入ったかな。仕方ない、五円くらい…
そう考えていると、トントンと優しく肩を叩かれた。
誰だ、と思いトンファーを若干抜き出しながら振り向くと、ショートカットの綺麗な女の人がいた。
「はい、これ」
差し出されたのは五円玉。落としたはずの五円玉だった。
「あ、りがとうございます…」
ぼそぼそと呟きながら受け取ると、「んふふ、ツっくんみたいで可愛いけど、落とし物には気をつけてね」と微笑みながら僕の頭を撫でて去っていった。
僕は五円玉を握り締めて、撫でられた頭を触りながら、胸の奥で何かがぽかぽかとしていくのを感じていた。
……父さんは、こんな町を守りたかったのかな。
父さんの気持ちが少し分かったような気がして、少し気分が良くなった一日だった。
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南条(プロフ) - 黒猫♪♪さん» 感想ありがとうございます!とても励みになります…! (2018年4月10日 7時) (レス) id: 05ac4354b9 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫♪♪(プロフ) - とても面白いです!自分のペースで更新頑張ってください! (2018年4月7日 4時) (レス) id: 80ca512ce2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:南条 | 作成日時:2013年8月30日 0時