標的7 真っ黒 ページ7
「あれが雲雀さん家の子?」
「一人ぼっちなんてお気の毒よね…」
「これからどうするのかしら」
ひそひそと、それでも確実に僕に聞こえるように話す声はすべて同情。視線も同情。空気も同情。
真っ黒な喪服を着ただけでなんでこうも強くなった気でいるの?普通は言わないようなこともポンポン出てきてるし。
いや、世間的にみれば同情するしかないのかな、両親がいない孤児なんて。
この葬式は僕の家でひっそりと行われている。組合の殺しを公にするとあまり良くないみたいだから、表向きは交通事故で両親は亡くなったことになってる。全てお父さんの部下の人たちが手配してくれた。さすが部下。
ちらりとその部下さんを見れば、しくしくと皆男泣きをしている。
普段はもっといかつい顔をしているだろう男の人も人が変わったように泣いている。それほどまでに慕われていたのか。
「あれあれ、親より早死になんてよくないねぇ…実によくない」
突然、しわがれた年寄りの声が聞こえた。残念そうに、悲しそうに、それでいて怒っているような声で呟いたのは、お婆さんだった。
顔に刻まれた皺の数は、今まで必死に生きてきた証だろう。
話から考えるに、彼女は僕の祖母だろうか?生憎僕は産まれてこの方、祖母に会った事がない。母さんは家族と絶縁状態らしいし、ならば父さんの母さんなのかな。
「あ?そこの坊やはあいつの子かい?憎たらしい程似てるねぇ」
その一言は、父さんに対しての嘲りかもしれないけど、僕の中にすとんと落ちた。
父さんと僕の性格は正反対で、外見だってあんまり父さんみたいに綺麗じゃないのに、お婆さんは似てると言った。そんなこと初めて言われた。だから、すっごく嬉しくて…
そうしていつの間にか僕は、お婆さんの腕の中で泣いていた。
今まで泣けなかったのに、わんわんと大きな声をあげて泣いた。二人の居ない寂しさや苦しさが、幾分か楽になるような気がした。
お婆さんは一度も、僕の背中や頭を撫ではしなかったけど、黙って胸を貸してくれた。
そんなお婆さんの不器用な優しさに。うっかり僕は甘えてしまった。
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南条(プロフ) - 黒猫♪♪さん» 感想ありがとうございます!とても励みになります…! (2018年4月10日 7時) (レス) id: 05ac4354b9 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫♪♪(プロフ) - とても面白いです!自分のペースで更新頑張ってください! (2018年4月7日 4時) (レス) id: 80ca512ce2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:南条 | 作成日時:2013年8月30日 0時