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えっ？これってなんかのマジック？
それとも…まさか…本物なの？
君の指先に灯る光は 段々と紅みを帯びてゆく
「本当に？守るって…簡単じゃないよ？」
いつになく真剣な君の眼差し
僕は何度も首を縦に振る
一瞬 躊躇って…やがて意を決して…
君の紅い光が指し示す軌跡
その先にあるのは芽生え始めの若い枝
応える様に揺れる緑の葉
君の指先から光が消えて枝に触れると
ポキッと折れて君の手の中に落ちる
ってか…勝手に折れた？
だって断面は結構綺麗だよ？
手の中に刃物仕込んでいたとか？
いや…そういう問題じゃなくて
そもそもこれ 折ったら駄目じゃん！
だって他の家の百日紅だよ？まずいって！
そう言いたかったのに…声が出ない
君は愛おしそうに指先で枝を撫でる
するとはらりひらりと
百日紅の花びらが雨の様に君に降り注ぐ
「想いを…繋いでくれる？」
想い？それは誰の想い？
その百日紅が関係してるの？
繋ぐって何を？君から僕が繋ぐって事？
…聞きたいのにやっぱり話せない
「百日紅 好きでしょ？」
声が出ない代わりに僕は頷いて答える
君は優しい笑みを浮かべて
僕の前にそっと枝を差し出した
何かに導かれる様に僕の手は
勝手に動き百日紅の枝を受け取る
「いつか再会する時まで…大切にしてね」
再会？じゃあまた会える？
いつ？何処で？すぐ？
それとも…気休め？
相変わらず出ない声に苛立ちながら
何とか伝われと唇を必死に動かす
「…大丈夫…解ってるから…」
その行動も見透かしてるのか
君の瞳が緩やかに弧を描く
「今度会う時は…違う形かもしれないけどね」
…違う形って…どういう事…？
疑問符が頭の中を埋め尽くした時
感じたのは冷んやりとした空気に混ざる
甘い香りと急に襲う眠気
自分の意志とは反して重くなる瞼
朦朧としていく意識の中で君が近付く
「最後に見たかったもの見せてあげるね」
僕の…見たかったもの？
眠たい目を擦りながら 視線が君を追う
すると君はふわっと宙に浮いた
えっ？何で浮いてるの？
やっぱり君は…百日紅の妖精さん？
「んふふ…違うよ…強いて言うならオバケかな？」
君ってオバケなの？
もしかして…まっつんのお姉ちゃんの
友達の友達が見たのは君って事？
舞い散る紅が君の姿を覆い隠し
段々と薄れて見えなくなる
「じゃあね」
パチンと音を立てる君の指
いよいよ目を開けられなくなる僕
最後の最後に見たのは
花吹雪越しの泣きそうな笑顔だった
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作者名：青山白樹
作成日時：2021年1月11日 10時
