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「えっ?いっ一緒に行く?何で?」

戸惑う君を横目に僕は笑顔で宣言する

「すぐに支度するからそこに居てね!勝手に行くのは無しだからね!」

僕は部屋に戻りお気に入りのリュックサックに

手当たり次第荷物を詰めて準備する

ちょっとだけ退屈だった夏に

降って湧いてきた大冒険

若干感じる切なさは取り敢えず横に置いといて

僕は何だかワクワクしていた



夕闇迫る町並

オレンジに染まる空と対照的に

建物は影絵みたいに暗色に包まれ

窓の明かりが灯り始める

この辺りは開発が進んでいて

ちょっとした住宅ラッシュ

変わろうとする風景たち

目に馴染んでいた物は

あっという間に塗り替えられて

それを寂しいと思わせる隙も与えさせない

まるで町を分断する様に

真っ直ぐに伸びた道

一方は駅へ続いていて

遠くにネオンが瞬いている

反対側はまだまだ長閑な田園地帯

当然の様に駅の方へ向かおうとする僕に

君はくるりと背を向ける

「ちょっと待って!こっちじゃないの?」

「逆にそっちに行く必要ある?」

さっきまで少し泣きそうだったのに

いつもの君に戻ってクールに呟く

「え〜こっちの方が面白そうだよ!お店いっぱいあるもん」

「こんな時間に子ども2人で繁華街うろついてたら目立つだろ?」

「…あっ…そういえば…そっか…」

僕は君の隣に並ぶと君ははにかんで笑う

「しかし何でそんな大っきな荷物なの?何持って来たんだよ 一体」

「何があっても大丈夫な様にばっちり入れて来たよ!家出するならいろんな物いるでしょ?」

『家出』という言葉に君は眉をひそめる

「別について来てとか一緒に行こうとか頼んでないし…そもそも家出とは違うし…」

ん?『家出』じゃない?

確かに君は着の身着のままで

荷物らしき物は何にもないけど…

「で、何処へ行くの?」

「えっ?どっ何処って?」

「そんな大きな荷物用意してるんだから…行く当てあるんでしょ?」

へっ?君、行き場所決めてないの?

急に何処行くって言われても…

僕はただ一緒について行こうとしただけだよ?

不安を煽る様に段々と藍色の面積が増える空

僕の大きなリュックを見て

犬の散歩するおじさんが怪訝そうな顔してる

君は踵を返し真っ直ぐに歩き始めた

でもその足取りはなんだか定まらなくて

消えそうで頼りなくて…放って置けない

本当に行く宛ないの?

ん〜どうしよう

あっ!そうだ!いい事考えた!

僕は君の手を引っ張って駆け出した

「こっちこっち!」


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作者名:青山白樹
作成日時:2021年1月11日 10時

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