トーストと目玉焼きと、コーヒー (ページ31)

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「やっと普段の雰囲気になった」

お酒を飲んで、小瀧くんが食べたいと言った牛タンチーズ焼きを食べた頃、小瀧くんはそう言った。

「え？」

「Aさん、今日ずっと変な感じやったもん。もしかして緊張してた？」

悪戯っぽい目でこちらを伺ってくる。分からないようでよく見ているんだ、この子は。

「ちょっとしてたかな」

「えー、俺なんかに緊張してくれるん」

「小瀧くんは緊張してないの？」

「もうピーク過ぎたからな」

小瀧くんは２杯目のコークハイを飲んで顔を真っ赤にしている。意外とお酒弱いのかな。

「いつがピークだった？」

「ごはん誘った時」

「謎に敬語だったもんね」

「だって友達でも同い年でもない、歳上の人誘うの初めてやったから」

小瀧くんがありのままに紡ぐ言葉は、私の胸にじゅわじゅわと染みこんでいく。

「金髪の人にナンパされてたし、先約入れられてたらどうしよう思って」

「それで電話してくれたの？」

「うん。だから今めっちゃ嬉しい」

真っ赤な顔で笑う小瀧くん。その言葉は本気なのか、それともお酒の酔いに浮かされたものなのだろうか。

期待したい自分と、踏み込めない自分と。

「そっか」

臆病な私は笑うことしか出来なかった。