不可思議な縁 ページ37
「無知の罪…だから能力が」
ロボロがハッとした表情で言葉を放つ
他のメンバーもそれに頷き、何かに納得する
「縁を切る…即ち忘れるという事」
オスマンが答えたと同時に、城の警備システムの警報が鳴った
無機質な機械のアナウンスが城内に響き渡り、辺りが緊張する
全員が臨時戦闘態勢に入ろうとした、その時
「やぁやぁ、久しぶりですねぇ。トントン」
胡散臭い男性の声が耳に届く
一番視力の良いゾムが確認すれば、瓶底眼鏡の青年が、
人らしきものを抱えて天井の細い柱を足場に立っていた
声をかけられたトントンも気付いたようだ
「！！
グルッペンが忌々しげに、怒気を含んだ、地を這うどす黒い何かのように叫ぶ
両目が、蒼くなった
「まぁ、落ち着いて。その節はお世話になりましたぁ」
嫌味を含んでチーノが言えば、グルッペンの殺気が膨らんでいく
(二つ…？)
ひとらんらんが疑問に思う
そう。殺気は二つある
一つはグルッペン。ならばもう一つは…
「軍曹！」
女の声が雑音を含んで彼の名を呼ぶ
そう。雑音だ
機械を通したかのような雑音の入り方
その違和感の理由は、すぐに分かった
「グリムはまだ返せません。だから、声だけ届けに来ました」
チーノが抱えていた人らしきものは人形だった
天井からその人形が落ちてきて、シャオロンが咄嗟に受け止める
ひとらんらんがのぞき込めば、そこにはボイスレコーダーが取り付けてあった
グシャリ…という音と共に、ボイスレコーダーはひとらんらんの手によって砕け散る
「いい加減にしろ…グリムを、どこにやった？」
如何することも出来ない怒りを、ひとらんらんはその身に持て余した
ひとらんらんの瞳が、真っ赤に染まる
それを狙っていたかのように、チーノは嬉気に笑った
「あぁ、やっぱり！アンタは憤怒や！」
瓶底眼鏡が、からんと床に落ちる
チーノのゴールデンイエローの瞳が細められ、唇は弧を描く
断罪者としての責務を果たすべく、チーノはひとらんらんに向けて攻撃を放った
眼鏡に一瞬気を取られていたひとらんらんは、それを避けることができない
「チーノッ！！！！」
耳を劈くような叫びと共に、刃物と刃物がこすれあう嫌な音が鳴った
ひとらんらんの目の前には、明るい金髪の青年が立つ
チーノはそれを侮蔑の目で見下す
「あぁ、また邪魔するんですね。コネシマ」
コネシマは、ただチーノを見据えるだけで、何も答えない
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