懐かしい彼 ページ32
「ん、ぅ」
グリムが目覚めたのは、高級そうなベットの上
周りを見渡せば、木造の建物だと分かるぐらいの木の匂いと、丸太の壁
ベットとはあまり合っていないその部屋に、グリムは懐かしさを感じる
軽く腕を伸ばせばボキボキと鳴る
「起きましたか?」
男性にしては少し高めの声がグリムの耳に届く
気配が察知できていなかったグリムは突然の声に肩を震わせた
いつもなら気配に気付けるのに、と自分の手を不思議そうに見る
「まぁ、無理もないですよ。五日も寝ていたんですから」
考えを見透かしたように、声は疑問に答えた
グリムは後ろを振り向く
そこには水色の髪と、
どこか頭の悪そうなそのメガネとは正反対の黒のサスペンダーからは、真面目な部分が窺える
まぁ、サスペンダーが真面目そうだと思うのは彼女の完全なる偏見だが
「貴女の事は軍曹から聞いています。まぁ、焦らずに俺の自己紹介でも聞いてくださいよ。
チーノです。もう予想できていると思いますが能力は心を読む事。軍曹の友達です」
「軍曹は、何時ここに戻ってくるの?」
グリムの問いにチーノはただ笑うだけだった
それにグリムはムッとして、チーノのサスペンダーを引っ張り、手を離す
ちなみに、ここまでの行動をするのに所要時間は約一秒
バチン!と音がして、チーノは目を見開き、時間差で来た痛みに顔を歪める
これまでの才能の無駄遣いはあまり前例にない
「い゛ッッ!!!何するんや!」
「質問に答えてくれないから。あと敬語が胡散臭い。で、チーノだっけ?軍曹は何処?」
【ここに居るよ】
グリムの目の前に、そう書かれたホワイトボードが出てくる
突然の事にグリムは吃驚するが、その文字を見るなり後ろを振り向く
明細柄の服に身を包み、首にはガスマスクがぶら下げられている
瞳は優しそうな雰囲気を醸し出しており、グリムと同じ蒼の瞳だ
「軍曹!」
「ちょっと、待ってくださいよ」
チーノがグリムを止める
グリムは掴まれた手を振り払おうとする、その手が外れることは無い
「いい加減目を覚ましてくださいよ。軍曹は死んだんです」
「は?」
チーノの唐突で、逆鱗に触れるような言動はグリムの心に突き刺さった
「正確には貴女の幻想。その先にあるのは虚無です」
「ちょっと待って!あなたは、軍曹の友達でしょ!?幻想な訳が…」
「ええかげん気付けや。グリム」
グリムの瞳に映る軍曹は、消えかかっていた
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