Episode81 ページ44
「ノイシュ…ああ、あの騎士か」
「はい。私は贖罪が悪いとは思いません。やり方が良くないのです。そして…そもそも聞いた限りでは、貴方は何も悪くないのでしょう?」
ヘルエスの問いにAは首を振る。
「ヘルエス…責任っていうのは、それ相応の立場や力を持つものが負うものなんだ。僕は…ルシフェル様のところにいながら…気付いていながら助けられなかった。誰が赦しても僕自身が赦せないんだ」
「貴方は、ご自身に厳しいのですね」
「甘いよ。甘いから…感情のままに行動するんだ…もっと気にすべきことはあったのに」
Aの中には未だ苦い思い出があり続ける。
「あの災厄で多くの被害が出ました。それは決して簡単には許されるものではありません。しかし、サンダルフォン殿は天司長としても責任と力をもって堕天司の王であるルシファーを討ち倒しました。…いいじゃないですか、少しずつ変えていけば」
「はは…本当に、人間ってのは強くなったなぁ」
「愚かな人間ばかりではありません。人もまた、成長するのです」
ヘルエスとしばらく外で過ごしていると、金色の髪の男が歩み寄る。
「ヘルエス様、Aさん。そろそろアルスター島につくので中にお戻りください」
「ええ、わかりました」
「了解」
「ノイシュ、Aさんの案内は貴方に任せます。施設や設備を教えて差し上げなさい」
「わかりました」
「お世話になるよ」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
にこやかに笑うノイシュにAは不思議なものを感じる。
「…ノイシュも、かつては自分を責めていました。もしかすると、今でもそうかもしれません。しかし、国の復興とスカーサハ様のお世話によって少しずつ罪の意識は薄れるのです。それは決して悪い事ではありません。国の復興に全力を傾けるならば、罪の意識は不要ですからね」
「…なるほど。こうなってみると、騎士団ってのも悪くないか」
「あら、Aさんがこの国にいるというのであれば、それ相応のおもてなしをしますよ」
「いや、この国はいいだろう。あんなにも優秀な騎士がいるんだ。フェードラッヘもリュミエールも…そして、かつて団長を追っていたエルステ帝国も…僕が守るのは、この蒼い空だ」
「空の騎士…ですか?」
「騎士っていうと、少し違うな。守護者ってのがいいか」
「お似合いです」
「ありがとう」
「さて、ノイシュが待っています。いきましょう」
「ああ」
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作者名:御煉 | 作成日時:2019年4月7日 14時