Episode42 ページ5
「Aの使徒は器用だな…」
「ルークは結界破りや魔法系に特化させたんだ。僕が自分を抑えきれなくなった時、ルークが抑える」
「そこまで考えて…」
Aの覚悟を感じたミカエルはそれ以上何も言わない。ルークの破った結界から中に侵入するA。グランの案内もあり、スムーズに進んでいく。
「…ここって、オイラ達がルリアと出会った場所じゃねぇか？」
「…つまり、ここで大いなる咆哮が成ったと」
Aは地面に手をつくと、何かを探るように目を閉じる。しばらくすると、立ち上がったAは歩き始める。
「あ、あの…Aさん？」
「帝国兵に追われ、互いに守ろうとした末に起こったこと。けど、その絆や想いを利用する奴もいる…それは誰であっても例外ではない」
「…」
「この地の記憶は全て木々が教えてくれた。そして、アドバンが何をしていたかも」
「なっ…本当か？」
「この先の祠で待ってる」
歩き始めたAのあとに全員が付いていく。不思議な気配のする森は、ただならぬ空気をまとっていた。やがてAは立ちどまると剣に手をかける。
「…面倒な真似を。わざと僕に木々の記憶を探らせておびき出して…何のつもりだ」
「おびき出して、というが…それについてきた間抜けは誰だ」
「間抜けはどっちだ」
Aは剣を地面にさすと、突如魔法陣が現れ、不思議な気配が満ちていく。
「ほう…結界か。つまらないな」
「ただの結界だったら簡単に破られただろうさ。けど…これは、ここに満ちる神々の力を利用したものだ。この結界内は虚無の力を無効化できる」
「なるほど…だが、おびき出したということで俺も準備はしてあるんだ」
アドバンが剣を掲げると、黒い何かが渦巻く。その切っ先に集った光は、真っすぐとAを捉える。
「チッ…ぬるかったか」
放たれた黒い光をよけることもせず受けるA。
「A！！」
「Aさん！」
慌てて駆け寄ろうとするルリアをサンダルフォンが止める。
「待て！今行けば巻き込まれるぞ！」
「で、でも…！」
「大丈夫だ。Aは簡単には死なない」
「ミカエルさん…」
ミカエルの言葉が正しいことを証明するかのようにAは悠然と立っている。その背には白い羽があるのだった。
「天司長の…力？」
白く神々しい羽が広がり、先ほどの黒い光がなかったかのように輝くのだった。
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作者名：御煉 | 作成日時：2019年4月7日 14時
