Episode68 ページ31
「誰だ、それは」
「オリヴィエっていうんだ。宵闇を司るんだけど、サンダルフォンと一緒に叛乱に参加して幽閉された。けど、どうやら封印をごまかして逃げたらしい」
「なるほど。そんな術が…」
「…そそのかされた、という点で言うならアザゼルもルシファーに騙されて叛乱を起こしたんだ。だからできれば助けたいけど、見当たらないんだ」
下に進みつつ、様々なことを説明する。最下層に難なくたどり着いたAは、あたりの気配を探る。
「…やっぱり、いなさそうだ。力の残滓すら残ってない」
「…これが、赤き地平」
サンダルフォンは眼下に広がる光景に息をのむ。
「パンデモニウムが赤き地平につながる、という噂もあるけど…残念ながらそんなことはない。このパンデモニウムの管理者は現在僕に継承されてるけど、起動する術を知らないんだ」
「では、他の堕天司は…」
「どうだろう。けど、とりあえず今は逃がすことはできない。まだ恨みを持ってたりするかもしれない。先に逃げた奴らを追った方がいい」
「そうだな」
再びパンデモニウムを上がっていく二人。突如、頭の中に声が響く。
「―――――ッ！」
「どうした」
突然立ち止まったAにサンダルフォンは声をかけるが、Aは固まったまま返事をしない。
「アスタロト！もうルシフェル様もルシファーもいないんだ！…は？いや、だからこいつは後継であって、本人じゃないんだ…なに？それはお断りだ」
剣を抜いたAは目にもとまらぬスピードで何かを切り倒す。そこに現れたのはうっすらと浮かび上がる天司の姿だった。
「…貴様がアスタロトか」
『ほう…確かにルシフェルではないな。Aよ、何があったか話せ』
「…何も知らない風には見えないけどな。ルシファーは神の造ったホメオスタシスを破壊するために叛乱を起こした。そしてルシフェルによって首謀者３人が断罪された。参加した堕天司はここ、パンデモニウムに幽閉された」
『それで騒がしかったのか…』
「しらじらしい。で、何千年もたったある日、お前を倒した少年…特異点は、大いなる咆哮をならして、それが発端で災厄と呼ばれる事件が起こる。小島がいくつか落ちたけど、それ以上は特異点の活躍で何もなかった」
「…」
『ほう、その災厄を起こしたのが後継か。無様だな』
「黙れ。お前も特異点に消された身である事を忘れるなよ」
鋭く睨み付けるAにアスタロトは面倒くさそうに息を吐くのだった。
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作者名：御煉 | 作成日時：2019年4月7日 14時
