Episode66 ページ29
「突然の呼び出し、悪い」
「いえ、久しぶりでしたがよかったです」
「でもどうして四大天司様や指教の天司様の前で…」
「どうしてもってことだ」
「ねぇねぇ、せっかく集まったんだからもう少し聴かせてくれよ！」
「ハーちゃん！これ以上はAの迷惑よ！」
「う…」
落ち込んだハールートを見かねたAは、リランに小さく何かを伝える。
「観客の皆さん、本日はお集まりいただき恐悦至極に存じます。つきましては、感謝の念を込めてもう一曲ご一緒頂ければと思います」
「…！」
「おっしゃー！」
「わぁい♪」
サンダルフォンは、呆気に取られてAを見る。
「たまにはおもしろいことやろう。サンダルフォン、みとけよ」
「…？」
全ての楽器を消滅させたAだったが、すぐに別の楽器が姿を現す。
「ピアノにベースにドラム…そんなに顕現して大丈夫なのですか？」
「労わるのはリランぐらいだな…まあ、平気だよ。むしろ、天司長の力が抜けた分だけ楽だ」
「私はピアノ？」
「ああ、リランにドラムをお願いしたい」
「わかりました」
それぞれ定位置に着くと、Aの合図でリランがピアノを弾く。が、次の瞬間にはベースの音とドラムが合流する。そのメロディは激しくも切なく響く。そして、最後は羽ばたくように終わる。
「…っと、これが最近人間にはやりのバンドってやつだ」
「うわ〜！なんだかすごいよ！」
「私は前、聴いたことがあったけど…今のは？」
「曲名は決めてないし、歌詞もないよ」
「てことは、Aが造ったの？」
「ああ、そうだよ」
「…妾には喧しかったな」
「そりゃ、さすがに近距離すぎるかなぁ」
「あら、ミカちゃんリズムとってたわよ？」
「んなっ…」
「…ところで、この人間の山はどうするんだ？」
ウリエルの言葉で振り返ると、いつの間にか観衆が集まる。
「…撤退だ」
「あ、蟻だ」
「おいサリエル！行くぞ！」
唐突に蟻を見つけたサリエルを何とか引っ張り、人込みを抜け出す。何とか抜け出し、無事に船に戻った時には全員が息を切らすのだった。
「…まさかあんなに集まるなんて」
「でもまぁ、いいものを聴かせてもらったぜ」
「ならよかったよ…」
ふと、周りを見渡すA。
「人間の前に滅多に顕現しない天司がここまで揃うのも珍しいな…」
「それも、もう昔の話だ。今は共存することを優先しておるからな」
「…けれど、未だパンデモニウムに封印されてる堕天司も多くいるわ」
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作者名：御煉 | 作成日時：2019年4月7日 14時
