Episode40 ページ3
サリエルの訴えにどうしたものかと考え込む。
「サリエル、約束しろ。必ず生きて無事に戻ることを。僕はお前を仲間だと思ってるし、僕だって生きててほしいと思う」
『…わかったよ』
『あ、おい！…いいのかよ？』
「…ま、本人の意思だ。それに戦力としては申し分ない。ブローディアを防衛に専念させよう」
『わかったぜ…』
「サリエルの事、見てやってほしい」
『それは、研究室育ちの言葉か？』
「いや、仲間としての言葉だ」
『なら断れねぇな』
その言葉を最後に通信が切れる。下位天司はクルクルと回りだす。
「…ルークに深追いをしないよう連絡。僕は少し休むよ」
部屋に向かう途中で食堂に立ち寄る。毎日のように向かっていた喫茶室も今では人すらいない。
「…クソ」
行き場のない怒りがたまってゆく。珈琲を淹れようと準備を始めると、気配を感じる。
「飲むか、珈琲」
「は、はい！」
「オイラ、甘いのがいいぜ！」
グラン、ルリア、ビィの分のカップも用意する。席まで人数分淹れた珈琲を運ぶ。何か言いたげな視線を感じつつ、Aは珈琲に口をつける。
「…言いたいことは、言った方がいいぞ」
「あ…あはは…」
苦笑いをしたルリアだったが、すぐに真剣な表情に戻す。
「あの…Aさん、最近寝てらっしゃいますか？」
「…どうして？」
「ずっと…何か気を張り詰めてるような気がして」
「フェードラッヘで眠ったよ」
「そ、そうなんですけど…ちゃんと、睡眠とってるのかなって」
「…今は寝れないんだ」
Aは申し訳なさそうに言う。
「寝れないって…」
「天司にとって眠れないのは、さほど重要ではないよ。あのベリアルは何千年も寝てなかったわけだし。体力の消耗もさほどないよ」
「ですけど…心は休まりませんよね？」
「…休めたいと思えないよ」
Aの言葉は怒りを含む。その意味が分からないほど鈍感ではなかった。
「…すみません」
「謝ることはないよ。ルリアやビィ、団長が気にかけてくれるおかげで僕はやってこれたんだ」
「へへっ、なんだかAが素直だと調子狂っちまうぜ」
「そうかもしれない…今は天司だけで防いでるけど、いずれ人間を巻き込まざる負えなくなる。その時までは休んでてくれ」
「A」
グランに呼ばれ、顔を上げる。
「団長として命令。この戦いが終わったら、もう一度珈琲を淹れること。そして、もう一度僕と勝負してほしい」
「…なっ」
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作者名：御煉 | 作成日時：2019年4月7日 14時
